東京電力福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した45世帯137人が国と東電に1人当たり1100万円、計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は17日、津波を予見して原発事故を防ぐことは可能だったとして、東電と国の責任を認め、原告62人に計3855万円の支払いを命じた。弁護団によると、福島第1原発事故で国と東電の「過失」責任、国の賠償責任を認めたのは初めて。今回の判決は、全国で審理が続く約30件の避難者集団訴訟で初の司法判断となり、他の訴訟に大きな影響を与える可能性がある。
 全ての電源喪失を招いて原発事故につながった津波を、東電と国が予見できたかどうかが最大の争点。2002年の政府の長期評価に基づき、東電が08年、津波は最大で高さ15.7メートルになるとの試算結果を得ていたことをどう評価するかがポイントとなった。
 原道子裁判長は試算結果を基に「東電は08年には実際に予見していた」と指摘。非常用電源を高い場所に移設するなどの措置を講じていれば津波で浸水することはなく、原発事故を防げたと判断した。
 その上で、対応を怠った東電を「津波対策で経済的合理性を安全性に優先させたと評されてもやむを得ず、特に非難に値する」と指弾した。
 国に対しては「規制権限を行使していれば原発事故を防げた」として、東電と同等の賠償責任を認定。予見可能性を否定してきた東電と国の主張を退けた。
 原告が求めた賠償は「個別に検討することが適切だ」と判断。避難区域から避難した原告72人のうち19人に75万~350万円、区域外からの自主避難者58人のうち43人に7万~73万円の損害を認めた。死亡などによる7人を除く他の原告72人の請求は棄却した。
 原告側代理人は「東電と国の責任が同等に認められたことは大きな意味がある。(一部が棄却されるなど)賠償内容は避難の苦痛に対しては十分ではない」と話した。
 東電は「判決内容を精査し、対応を検討する」、原子力規制庁は「われわれの主張とは違った判決になった。21日の原子力規制委員会臨時会で対応方針を議論する」と説明した。

[東京電力福島第1原発事故]2011年3月11日の東日本大震災による地震と津波で、福島第1原発の原子炉6基のうち1~5号機で全交流電源を喪失、原子炉などを冷却できなくなった。1~3号機で炉心溶融が起き、1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発した。大量の放射性物質が放出され、国は福島県の原発周辺市町村に避難指示区域を設定。住民は強制的に避難させられた。対象外の地域から放射線被ばくを避けようと自主避難した人も多い。福島県によると、県内外への避難者数は計約7万7千人(3月13日現在)。