東京電力福島第1原発事故による放射性物質に汚染された国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の廃棄物の処理方法を巡り、栗原市で意見が割れている。選択肢として堆肥化や焼却、すき込みなどがあるが、いずれも安全性を巡る見解に異論が出ており、万人が納得する答えがない状況だ。市は2017年度に方法を決めるが、決定までのプロセスを透明化し、徹底して市民と「対話」する取り組みを求めたい。(栗原支局 土屋聡史)

 「どのやり方もデータの見方や考え方で賛否が分かれる。正直、もう処理方法は何でもいい。問題を早く終わらせてほしい」
 昨年暮れ、市内のある農家から聞いた言葉だ。あの時のうんざりした表情が忘れられない。
 栗原市では現在、200戸以上の農家が計2000トン以上の汚染牧草を一時保管している。原発事故直後から対処を求める声が上がっていたが、国は指定廃棄物最終処分場の候補地選定に時間を費やし、基準以下の汚染廃棄物問題をおざなりにしてきた。農家が憤るのも無理はない。
 そんな状況にしびれを切らし、いち早く独自の処理方法を模索したのが栗原市だった。国が勧める焼却は、市内のごみ処理施設の周辺に住む市民の反対が根強い。市は学識者と連携して代替方法を検討。汚染牧草に微生物や牛ふんなどを混ぜて堆肥にする試みに可能性を見いだした。
 市によると、昨年7~10月の堆肥化の実証実験で確かめた主な利点は三つあるという。(1)牧草の量を9割以上減らせる(2)堆肥を使って育てた植物に放射性物質が移らない(3)同物質の飛散は見られない-だ。
 実験のアドバイザーを務めた松井三郎京大名誉教授(環境工学)は「安全な濃度に薄めて土壌に返す環境循環型の手法。世界初の成功例になる」と強調する。

 だが否定的な見方も少なくない。市議会や住民説明会では、量が膨大になる堆肥の活用策や、放射能濃度の高い場所で堆肥を使った場合の環境への影響などに関して不安の声が出た。昨年12月議会の採決では堆肥化の事業計画案が僅差で見送られ、今年2月にようやく手法を検証するための調査事業費が認められた。
 市議の間には焼却容認論もある。仙台市が15年に実施した焼却処理で周辺の空間線量に変化がなかったことなどから、安全性が担保されているというのが理由だ。
 「見方によって賛否が分かれる」との農家の嘆きが思い出される。全ての手法に何らかの懸念が指摘される以上、住民の心配を取り除くのは容易ではない。
 だからこそ市には透明性を前提にして各手法を丁寧に分析し、あらゆる考え方の人たちの疑念に一つ一つ応える努力を惜しまないでほしい。その姿勢が結果的に検証の精度を高め、ひいては市民の不安を軽減することにつながると思う。
 市は今夏にも調査結果をまとめ、市民に説明する。取り組み方次第で、同じ課題を抱える他の自治体に光明を与えるはずだ。


[汚染廃棄物の処理を巡る栗原市の調査事業] 市内の汚染牧草を原料にした堆肥を使って植物を露地栽培し、放射性物質の移行の程度や環境への影響などを分析する。焼却やすき込み、保管といった各手法との比較調査も併せて実施し、それぞれのメリット、デメリットを検証する。事業委託料は462万円。