3年前に亡くなった酒田市生まれの詩人吉野弘さん(1926~2014年)が青年期に酒田の詩作仲間と発行した同人誌「こだま」全57号が、酒田市に寄贈された。吉野さんの初期作品のほか、詩作仲間との交流がうかがえるページも多く、市の担当者は「酒田の文化として多くの市民に見てもらいたい」と語る。
 寄贈したのは、1952年から60年までこだまを不定期発行した「こだま詩の会」の元会員成田邦雄さん(84)=酒田市=。自宅で保管してきたが、「地元の偉人を伝える貴重な資料を残したい」と決心した。
 こだまはB5判ほどの大きさで1冊当たり20~30ページ。毎号100部余り発行し、酒田市内のほか、仙台市や東京都の会員に配った。
 吉野さんは53年の5号から「城史郎」のペンネームで作品を寄せた。徐々に詩の会で指導的な役割を担うようになり、39号は「吉野弘第一詩集出版記念特集号」として詩作仲間からの批評やお祝いが掲載された。
 30号には成田さんに宛てた吉野さんの詩作論が掲載されている。こだまは吉野さんが酒田を離れ、もう一人の中心人物が亡くなったことで57号で幕を閉じた。
 市役所で2月にあった寄贈式には、成田さんに寄贈を勧めた山形県詩人会の前会長、高瀬靖さん(80)=酒田市=も出席。「吉野さんが仲間と共に詩作に励み、自分なりに詩の在り方をつかんだ場だった。最後はプロとして生きようとする意識の芽生えが垣間見える貴重な資料だ」と話した。
 成田さんは当時の自宅にガリ版印刷機があったためこだまの印刷を兼ねて、吉野さんらと頻繁に合評会を開いた。「誰にも均等に接する尊敬できる先輩だった」と語り、村上幸太郎教育長に全号を託した。
 市図書館には38号分しか所蔵されていなかった。村上教育長は「大切に保管する。市民に広く知ってもらえるよう、公開方法を考えたい」と謝意を述べた。