動物園が飼育する個体としては国内最高齢のニホンイヌワシが秋田市大森山動物園にいる。雄の「鳥海」。推定47歳。人間だと100歳を超す。国の天然記念物で絶滅危惧種のニホンイヌワシの繁殖や研究に貢献したとして、鳥海は日本動物愛護協会(東京)の「日本動物大賞・功労動物賞」を2月に受けた。40年以上見守る園長の小松守さん(64)は「研究を共にした戦友のような存在」と、受賞をわがことのように喜ぶ。
 鳥海は1970年7月、鳥海山麓で巣立ちに失敗したところを保護され、同園に引き取られた。同4月ごろにふ化したとみられる。
 75年に獣医師として動物園に赴任した小松さんは、国内で例がなかったニホンイヌワシの繁殖に着手。飼育小屋のそばに段ボールでテントを張り、のぞき穴を開けて鳥海の行動を毎日観察した。「未知の分野に足を踏み入れ、意欲に燃えていた」と振り返る。
 地道な研究を続けること10年。小松さんは「コーコー」という鳴き声が、交尾直前に「ヒョンヒョン」と変わることに気付いた。同園はこの変化を生かして、人工授精の技術を確立。試行錯誤を重ね、小松さんが園長に就任して5年後の2003年、鳥海の子ではないものの国内で4園目となる繁殖に成功した。現在は10羽のニホンイヌワシを飼育する。15年には、環境省からニホンイヌワシの保護・繁殖拠点の指定を受けた。
 危機もあった。昨年11月、同園で鳥インフルエンザが発生した際、鳥海は死んだコクチョウと同じ施設にいた。感染の可能性もあったが、簡易検査で陰性が続き、殺処分されずに済んだ。
 鳥海は現在、園内の動物病院でガラス越しに観察できる。やせた体には白い羽が交じり、動き回ることは少ない。それでも、小松さんが近づくと、「コー」と鳴き、体をばたつかせる。
 小松さんは「鳥海のおかげで、大森山動物園はニホンイヌワシの繁殖拠点になることができた。これからも長生きしてほしい」と優しいまなざしを向ける。