筋萎縮性側索硬化症(ALS)を33年間患い、一昨年12月に83歳で亡くなった秋田県大潟村の松本茂さんが生前につづった詩や友人への手紙などを、妻るいさん(87)が遺稿集として自費出版した。タイトルは「俺は生き抜いたよ」。村の発展や医療環境の充実に尽力した茂さんの思いが詰まっている。

 高知県出身の松本さんは大規模農業を目指し、1966年に大潟村に入植。50歳で体の運動機能が低下するALSを発症した。気管を切開して人工呼吸器を着け、るいさんの介護を受けながら生活した。目や顎の動きでモニターに映る文字を集め、周囲とコミュニケーションを取った。
 闘病生活を送りながらも、コメ作りのために在宅療養を続け、リハビリを一日も欠かさなかった。数年に一度は「死んでもいいから」とコンバインに乗って稲刈りをした。るいさんは経鼻チューブの交換や呼吸器の管理方法などを学んで夫を支え続けた。
 「楽しい人生があるのだから死んではいけない」「介護があれば人間らしく生きていける」
 茂さんの死後、残された友人宛ての手紙やファクスなど約1万枚を読み返したるいさんは「懸命に生きた夫の姿を知ってほしい」との思いを強くした。友人で日本ALS協会秋田県支部の元事務局長荒谷紀子さん(75)=秋田市=に相談し、昨年6月から編集に当たった。
 遺稿集には、87~2003年に会長を務めた日本ALS協会の活動や車椅子で旅行した思い出などを収録。闘病生活や家族との記念写真も載せ、親交のあった作家の柳田邦男氏らが寄稿した。
 るいさんは「夫を支えてくれた人たちへの感謝の気持ちも込めた。同じ病気で苦しむ人たちの生きる希望になってほしい」と話す。
 遺稿集はA5判、286ページ。2500部作成した。希望者に無料で配布し、郵送にも応じる。連絡先は荒谷さん018(834)5077。