山形、福島県境の山あいにある米沢市大沢地区で、地域振興担当の同市職員相田隆行さん(42)が空き家だった古民家を活用して住民との交流を進めている。高齢化が著しい「限界集落」を学びの場として、地域づくりに関わる仲間の大学生らと散策ツアーやゼミなどを企画。存続が危ぶまれる過疎の集落ににぎわいを生んでいる。

 大沢地区は山形と福島を結ぶ峠越えの宿場町として栄え、1960年代には約500人が暮らしていた。現在の住民は20人に満たない。JR奥羽本線の無人駅と1軒の旅館がある。
 相田さんは3年ほど前から、集落調査で地区に通うようになり、仲良くなった住民の勧めで昨年6月、平屋の古民家を借りた。手付かずの自然が広がる豊かな環境と、住民のおおらかさや豪雪に耐えて暮らす粘り強さに引かれた。
 山深い地域だが、市中心部から車で約30分、電車では10分ほどの距離。週末ごとに通い始めた相田さんは、自身が関わる地域づくり活動の仲間との会合やゼミ合宿の会場に古民家を提供し、住民と交流会を重ねてきた。地区周辺を会場にしたJR東日本の散策ツアーが組まれるなど、交流人口は増えつつある。
 「みんな年を取ってしまって超が付くほどの限界集落になったけれど、若い人たちがやって来るようになってにぎやかになってきた。楽しいし、大いに刺激になる」。大沢地区で生まれ育った民生委員の後藤重明さん(65)はほほ笑む。
 この冬は地区住民を交え、仲間と無人の雪原でスノーモービルを楽しんだ相田さん。春には東日本大震災で被災した福島の子どもたちを招待し、学生と野山で遊ぶ企画を考えている。
 相田さんは「米沢で生まれ育った自分でさえ大沢の魅力を知らなかった。人と自然が共生する暮らしをなくすのが惜しいと思い、学びを通した交流を続けている。ここは僕らの秘密基地なんです」と話した。