◎東北大大学院経済学研究科准教授(企業倫理・CSR)高浦康有氏に聞く

 東日本大震災に関するCSR(企業の社会的責任)意識調査で、企業が社員をCSR活動に巻き込む重要性が明確になった。
 調査結果からは従業員の忠誠心や全社の一体感の醸成、企業理念の再確認といった長期的な視点で見た内向きの効果と同時に、被災地との関係強化という外向きの効果がうかがえた。
 震災では専門家のボランティア集団「プロボノ」や社員ボランティアが活躍した。こうしたCSR活動は事業継続に役立ち、従業員の忠誠心を高めると感じている企業が多かった。
 (CSRの発展形として)本業を通じ、収益を上げつつ社会課題を解決するCSV(共通価値の創造)という概念がある。現段階では企業のブランド価値向上など間接的な効果が主で、直接的な収益と結び付けていない。復興支援を道義的な責任感で始めたためか、戦略性は強くない。
 震災を機にCSRに対する考え方が大きく変化したとは言い難いが、インパクトはあった。地域を問わず、企業規模が大きくなるほど支援を行う傾向にある。それでも、中小企業が多い宮城では6割が「意識が変わった」と答えた。被災し、地域への思いを新たにしたと推測できる。
 業種では商業は7割が「変わった」と回答した。大半が宮城県内の会社だ。当時「消費者=被災者」を支える立場にいたからだろう。建設業も7割。宮城、東京とも同じ傾向で「被災地を支える」という意識が強かったと考えられる。
 「恩返し的な動き」も垣間見える。復興支援をした企業の7割は、支援の受け手でもあった。支援の有無が、その後の活動を決めたとも読める。ボランティアの世界では支援を受けた個人が、支援する側に回る傾向がある。企業でも同様の傾向があるようだ。
 調査からは、企業が自らの役割の大きさや影響力を再認識した点を確認できる。震災直後、行政が十分機能しない中、企業は物資提供やコミュニティー支援に携わり、人的、金銭的資源の乏しいNPOと協働した。行政、企業、NPOが連携してコミュニティーを再興していく。企業の公的な役割が、かつてなく強く意識付けられたと言える。