青森県弘前市の代表的ソウルフード「いがめんち」がピンチだ。不漁続きで原材料のイカゲソの価格が高騰。メンチの大きさを抑えるなどの企業努力でしのいできたが、値上げに踏み切る店も出てきた。「安くてうまい」が売りの「いがめんち」。訪れる客たちも固唾(かたず)をのんで見守っている。

◎小さめに 値上げも

 飲食店経営者から悲鳴に近い嘆きが聞こえてきた。同市百石町に開業して10年の居酒屋「日向ぼっこ」の竹内逸子さん(67)は「8キロ2800円ぐらいで仕入れてたイカゲソが、今では8000円」と話す。400円で提供していたメンチを50円値上げした。「4月下旬に仕入れ先から在庫切れを告げられた。店の在庫が切れたら(いがめんちも)休むしかない」と残念そうだ。
 「冷凍イカ1パイの値段が昨年比で4~5倍になった。店を30年やってきて初めて」と訴えるのは居酒屋「音羽亭」の相馬信秀さん(60)。「工藤惣菜店」の工藤友祥さん(54)も「(一括大量仕入れができないので)最低限の数だけ買うようになったが、今年1月ごろからどこのスーパーでも売っていないよ」と品不足の様子を教えてくれた。
 深刻な不漁の影響だと指摘するのが「弘前いがめんち食べるべ会」。料理による地域活性化を目的に2011年に市内の飲食店21店舗で発足させた同会の萢中(よちなか)勉事務局長は「元々まかない料理だから、店でも高く出すわけにはいかない」と強調する。相手が海の中のイカだけに、先が見通せない状況にも表情を曇らせた。

◎漁獲量7割減

 スルメイカの青森県内の漁獲量(1960年以降)は、96年の約16万4600トンをピークに減少している。2016年の漁獲量は全国一だったものの、前年比3割減の約2万2500トン。今年3月は前年同期比7割減の376トンだった。
 一方、漁船で急速冷凍する冷凍スルメイカは16年の県内の漁獲量が9030トンで、平年比3割減だった。
 昨年の漁獲量減少について、県水産振興課は「15年12月から16年3月にかけての産卵期に東シナ海の海水温が下がった。卵のふ化に大きく影響し、ふ化しても死滅したのではないか」と分析。「今年に入って産卵海域の水温が上昇しており、回復が見込めるかもしれない」と期待する。
 また、日本近海で不振なのは、太平洋を北上する「冬生まれ群」と呼ばれるスルメイカの群れを狙った漁。県は漁業者に対し、日本海を回遊する「秋生まれ群」の漁獲を推奨するなど資源管理も呼び掛けている。

[いがめんち]津軽地方に伝わる家庭郷土料理。細切れのイカのゲソと余り物の玉ねぎなどの野菜を合わせて、小麦粉を混ぜ油で揚げるか焼く。戦前、内陸部で貴重な海産物を食べ切る家庭の知恵として生まれたとされる。津軽弁で「イカ」を「いが」と呼ぶことから名付けられた。