東京電力福島第1原発事故で被災した福島県内の自治体などが、避難区域での災害発生に危機感を強めている。浪江町の帰還困難区域で起きた大規模山林火災で、対応が困難を極めることが明らかになったためだ。原発被災地では地域の防災力が低下し、国の積極的な関与を求める声も上がっている。(南相馬支局・斎藤秀之)

<防護マスク必要>
 今回の山林火災を検証する目的で福島県などが5月末に開催した会議で、陣頭指揮に当たった双葉地方広域市町村圏組合消防本部の大和田仁消防長は「帰還困難区域の災害に備え活動要綱を整えたい」と述べた。
 延焼エリアは除染が進んでいないことから一般の立ち入りが制限され、消火活動には防護マスクの着用といった放射線対策が欠かせなかった。荒廃した山道は進入も難しい。関係機関の想定を超える厳しい活動環境だった。
 消防本部は7月にも新たな要綱を策定する考え。空中消火や消防ヘリコプターの駐機場確保策などが軸となる見通しだ。県消防保安課は「装備面の検討も求められる」との認識を示す。
 福島の帰還困難区域の面積は計約337平方キロ。浪江、双葉両町や南相馬市など7市町村にまたがる。広大な地域をいかに災害から守るか。被災自治体に突き付けられた課題は重い。

<異変察知難しい>
 ほぼ全域が帰還困難区域となっている双葉町。伊沢史朗町長は「町内では災害対策本部設置もままならない。近隣自治体との連携強化を急ぐ」と口元を引き締める。
 住民不在のエリアでは異変の察知さえ難しい。南相馬市の桜井勝延市長は「初動の強化を図る」として職員参集訓練などに力を注ぐ構えだ。
 防災上の懸念は、既に避難指示が解除されている地域にも残る。災害弱者を支えてきたコミュニティーは崩壊し、消防団は組織力の低下が否めない。
 昨年7月に指示が解除された南相馬市小高区は、原発事故後に消防団員の3割以上が脱退した。新加入はゼロが続き、片岡芳広区団長(65)は「世代交代が進まなければ活動停滞は免れない」と表情を曇らせる。

<団員500人が離散>
 今春解除の浪江町では500人の団員が離散し、避難先への定住が進む。佐々木保彦団長(70)は「誘致企業の従業員が入団するなどしなければ、組織を維持するのも難しい」と嘆く。
 災害は何も山林火災に限らない。荒れた山林は土砂崩れを誘発し、ひとたび水害が起きれば被害は広範囲に及ぶ。地域が深刻な打撃を受けると、再生の道が遠のきかねない。
 山林火災を受け、福島県は国に防災対策の支援を要請している。県災害対策課は「帰還困難区域、解除地域とも特殊な環境下にあるのは事実。住民帰還に向けて安心感を提供したい」と説明する。

[浪江町の山林火災]4月29日に同町井手の国有林から出火。消防、自衛隊などが消火に当たり、発生12日目の5月10日に鎮火した。推定焼失面積は隣接する双葉町を合わせて約75ヘクタール。家屋被害、けが人はなかった。出火原因は樹木への落雷とみられる。