飯豊、吾妻連峰が連なる山形県置賜地方には、野趣に満ちた温泉宿が点在している。中でも最上川源流部にある米沢市李山(すももやま)地区の大平温泉「滝見屋」は隠れ宿として知られる。若女将(おかみ)の安部里美さん(38)が秘湯の魅力を内外に発信している。(米沢支局・相原研也)

◎大平温泉「滝見屋」若女将 安部里美さん(38)

 -冬を越え、今年も無事営業を再開しました。
 「春は特別です。雪で宿がつぶれていないかと、毎年ドキドキします。大型連休中に再開しましたが、今年は雪解けが遅く、露天風呂が使えなかったので夜に雪明かりをともし、幻想的な雰囲気を演出しました」

 -宿にたどり着くまでが大変ですね。
 「集落の入り口から車で30分。さらに駐車場から山道を20分ほど歩きます。日帰りだと、来た道を倍の時間かけて上って戻ります。露天風呂で汗を流しても車に着いたころには汗だく。すごい所ですよね」
 「今年で創業108年になります。常連のお客さまに支えられてきました。今の常連さんの最高齢が94歳の女性の方です。行きも帰りも自分の足。達成感があるそうです。この宿には時間的、体力的に余裕がなければ来られません。あるのは雄大な自然だけですが、それが良いとおっしゃってくださいます」

 -宿での過ごし方は。
 「お部屋で本を読んでいらしたり、露天風呂に入られたり、川で釣りをされたりいろいろです。何か特別な事を提供できるわけでもないので、程よい距離感を保ちながらお客さまを見守っているという感覚です」
 「寺と檀家(だんか)の関係にも似ています。山深い大自然の中ですから、万が一何かあった場合、みんなが一晩限りのクルーになる可能性があります。不思議とお客さま同士が仲良くなる雰囲気があるんです」

 -雪で宿が閉鎖される冬の間、台湾にいますね。
 「縁あって10年ほど前からお仕事しています。台湾の方々に日本の秘湯を紹介する記事を現地の雑誌に連載しています。当初は秘湯が海外で受け入れられるとは思っていませんでしたが、最近では台湾のほかタイやアメリカなどからのお客さまが増えています」
 「海外の方々からの反響で気付かされることが多く、秘湯の可能性を感じます。温泉地、秘湯同士が結び付くことでさらなる魅力になっていくと思っています。それを広く発信していきたいです」