◎「東北食べる通信」編集長 高橋博之氏に聞く

「自然と人間の通訳者」が果たすべき役割を、食べ物付きの月刊誌「東北食べる通信」編集長の高橋博之氏に聞いた。

 田んぼで都市住民には聞こえない自然の声を聞き、メッセージを読み取って提起する。伝承野菜をリノベーションして地域に人を呼び込む。今回の特集にはそんな2人が紹介された。
 高度成長期から続く大量生産と大量消費は、生産と消費の関係をいびつにした。生産者は消費者を「お客さま」と呼ぶが、消費者は「生産者さま」と呼ばない。上下関係から敬い合う対等な関係にしないといけない。
 日本は98%が消費者で、2%が生産者。日々移り変わる自然の中で農家は田畑に病気が発生したとか、漁師はこれまで豊富だった魚が捕れなくなったとか、毒ガスを検知するカナリアのように異変を敏感に感じ取る。でも98%は自然界のメッセージに気付かない。
 世界的な民間シンクタンク・ローマクラブが1972年、「成長の限界」を著して資源の枯渇や環境破壊に警鐘を鳴らした。あれから45年、まだ成長路線重視は続いている。人間も自然の一部のはずなのに、生き物としての感覚を失っているように見える。
 東日本大震災を契機に創刊した食べる通信では、消費者が生産者に会いに行くツアーも実施している。都会の人間が農業や漁業に触れると、生命が循環する自然の豊かさに驚く。
 金もうけ一辺倒という直線的な豊かさを自然は許してくれない。土と海に相対すると「ほどほどにする」ということの重要性に気付かされる。「生産者を助けるため」という観点から1次産業の振興策が議論されるが、むしろ消費者が生産者に学ぶべきだろう。
 生産者と消費者の分断を超えるため、「都市と地方をかきまぜる」ことを提案している。霞が関の官僚が考える制度はもう限界。地方に「逆参勤交代」して耕作放棄地を耕し、食べ物を作ったらいい。
 ビルの中で疲弊しながら残業するよりはアイデアが生まれ、むしろ国際競争力は上がるだろう。