◎原発被災地の行方 南相馬市/桜井勝延市長

 -東京電力福島第1原発事故による南相馬市の旧避難区域の帰還者の割合が2割を超えた。
 「避難生活中も、故郷での生活再建を諦めなかった住民に感謝している。市は2016年度中の3000人の帰還を目指していた。高校生や勤務者を含めれば日中の滞在者は3000人を超える。目標を大きく下回ってはいないと考える」

<民間の力生かす>
 -帰還者には高齢層が目立つ。
 「原発事故時の混乱が記憶に焼き付き、帰還を決断できない人も少なくない。女性を中心とした生産年齢人口の減少は全市的な課題だ。購買力が大きいだけに地域経済への影響も見逃せない。魅力の発信に力を注ぎ、市外から移住してもらえるよう努める」
 「移住の前段として交流人口の拡大が必要となる。市は各地の大学生や研究者に共有スペースを提供してきた実績もある。小高区に建設する交流拠点の一部を若者に活用してもらうなど、地域との接点を増やしていくことも考えられる」

 -解除地域の生活基盤をどう整えていくのか。
 「市は公設民営による商店の開設、調剤薬局への薬剤師派遣などに取り組んできた。買い物や域内移動など帰還住民のニーズは多様だ。そこにビジネスチャンスもあるはず。公的サービスでの対応だけでなく、民間が進出できる環境も整えていきたい」

 -農業再生は。
 「小高区の沿岸部はいったんは大規模な水田整備が必要。その上で花の栽培など稲作以外に活用しても構わない。山間部は牧草地や飼料作物などへの転用を探ってもいい。安心できる農作物は高値でも売れる。小規模でも経営的に成り立つ農業はできるはずだ」

<ドローンに期待>
 -小型無人機「ドローン」や災害対応用などロボットを軸にした産業振興を掲げている。
 「製造大手と地元業者が機体開発で協力するなど、具体的な成果も出つつある。市内では実証実験などを行う『ロボットテストフィールド』が来年度に一部開所する。地元との連携の動きはさらに広まるだろう」

 -今年から小高区内での遠隔診療サービスも始まった。
 「自宅で診察を受けられても、調剤してもらうため患者は薬局まで出向かなければならないのが現状。国に対応を求めているが各種規制は厳しい。南相馬がドローンによる薬の配送実験の舞台になるなどすれば、規制緩和の可能性は出てくると思っている」(聞き手は南相馬支局・斎藤秀之)