東日本大震災の津波浸水域での商業施設開業が相次ぐ岩手県沿岸部で、津波避難の在り方が新たな課題に浮上している。それぞれ避難訓練や避難場所、マニュアルの整備を進めているが、不特定多数の人々が行き交う施設だけに関係者の試行錯誤が続く。
 月命日の11日、JR大船渡駅周辺地区に立地する商業施設で避難訓練があった。4月下旬の開業以来初めてとなる訓練では、飲食店の従業員らが約500メートル離れた市指定の1次避難場所までのルートを確認した。
 マニュアルは、(1)避難勧告の発令以上で従業員らが買い物客を誘導(2)施設に絶対戻らない-など震災の教訓を徹底。市は近くに建設中の公共施設を津波避難ビルに指定する方針で、逃げ遅れた場合にも対応する。
 休日には1時間当たり最大2000人が訪れる相当な混雑が見込まれ、多くがマイカー客。周辺には商店街やホテル、スーパーが集積し、避難による道路渋滞も懸念される。
 商業施設を運営するまちづくり会社「キャッセン大船渡」は「徒歩避難を徹底するにも、どこまで強制力を働かせられるだろうか。関係者で協議してルール化していかなければならない」と語る。
 同じく4月下旬にオープンしたばかりの陸前高田市の商業施設「アバッセたかた」は、かさ上げ地に立地するものの防潮堤が完成していないため、警報段階で避難を始める。
 市は近くの高台を緊急避難場所に指定する考え。専門店街の運営組合の藤村好博副理事長は「避難所に移動するには、低地を通る必要がある。高台に続くスロープもなく、改善してほしい」と求める。
 休日には1万人前後が訪れる釜石市のイオンタウン釜石。昨年11月に初めて営業時間内に避難訓練を実施し、買い物客の誘導に取り組んだ。
 詳細なマニュアル作成を進めているが、検討項目は多岐にわたる。担当者は「避難する際、市の指定場所と屋上のどちらを選択するかなど判断が難しいケースが多い」と頭を悩ませる。