農家や漁師の声を届けるウェブメディア「日本食べるタイムス」が、東北の生産者に会いに行くツアーを企画し、首都圏から若者を呼び込むプロジェクトを始めた。中心となって動くのはタイムス編集部の大学生スタッフ。「自然と人間の通訳者」として、農山漁村の魅力を学生ならではの視点で発信し、生産者や地域にほれ込み移住する同世代を増やす。
 第1弾のツアーが1、2の両日、山形県小国町であった。東北での就農や移住を目指す若者や夫婦ら10人が参加。編集部の案内で「観光わらび園」を成功させたキノコ農家、女性初のマタギになった町職員らを訪ね、膝詰めで話した。
 キノコ農家の渡辺正義さん(64)方では、集落の山が観光わらび園に変わるまでの奮闘ぶりを聞いた。「最初は何をやっても反対される。諦めずに説得し、地域を巻き込むことが大事だ」と、農山漁村で暮らす極意を伝授された。
 ツアーは国際教養大4年国重咲季さん(22)と早大5年森山健太さん(22)が立案した。「地方にこそ若者が活躍する場があると伝えたかった」と国重さん。森山さんは「マタギ女性の『半官半猟』みたいなライフデザインを知ってほしかった」と意図を説明した。
 2人は5月以降、小国町に数回通って渡辺さんを密着取材し、特集記事を「食べるタイムス」サイトで発信。町役場や地域おこし協力隊との打ち合わせも重ね、町の魅力と暮らしの実際が伝わる旅程を考えた。
 小野寺萌編集長(29)は「ツアーの企画、運営を学生編集部員が取り仕切ることで参加する同世代の共感が得られ、人材育成にもつながる」と意義を語る。
 移住に関心がある若者は現地の人、暮らし、コミュニティーの情報を求めているが、発信されるのは自然やグルメなどの情報ばかり。「学生の視点をツアーに採り入れ、ミスマッチを解消することも目的の一つ」という。
 食べるタイムスは今後も小国町など東北の自治体と組んで、ツアーを開催したい意向だ。小野寺編集長は「5年後、100の地域でこのプロジェクトを花開かせ、『大交流時代』を引き起こしたい」と意気込む。
 食べるタイムスは、食べ物付きの情報誌「東北食べる通信」を発行するNPO法人東北開墾(花巻市)が企画し、学生主体で運営している。

[自然と人間の通訳者]大量生産、大量消費で失われた自然と人間の結び付きの回復、分断された生産と消費の関係修復を担う者。河北新報社が発表した「東北の道しるべ」では、「『自然と人間の通訳者』を育てよう」を提唱し、農林水産業に関わる若い世代にその役割を託している。