「わざと詰まらせたんです」
 殊勲の一振りをそう説明したのは、ホンダ鈴鹿(三重県鈴鹿市)の松本桃太郎だ。東京ドームで行われている社会人の都市対抗野球大会。15日にあったきらやか銀行(山形市)との1回戦、右前にしぶとく落として同点打にした。
 東海地区予選で厳しい内角攻めに遭い、詰まらせる技を磨いた。バットの芯ではなく根っこ付近に球を当てるのがこつだと言う。右前打は「少し伸び過ぎた。本来なら二塁打にしたかった」と笑った。
 仙台大4年だった昨年、仙台六大学リーグの最多安打記録を塗り替えた好打者は「東北楽天の銀次さんの打撃練習を見ていました」と明かす。身近なプロの技をしっかり盗んでいた。冒頭の発言は、銀次が2年前の西武戦で決勝打を放った際に語った言葉でもある。
 2人は同じ左のアベレージヒッター。プロ入り後に下積みが長かった銀次と、大卒プロ入りを逃した桃太郎。決して順風とは言えない野球人生もどこか似ている。
 2人に通じるのは古風な名前だけではなさそうだ。おとぎ話ではないが、今後のドラマを期待してしまう一幕だった。
(剣持雄治)