山形県酒田市などJR陸羽西線の沿線自治体が中速鉄道による山形新幹線の庄内延伸を提唱している。関係者は「膨大な費用と長い年月がかかるフル規格新幹線より優位性が高い」と利点を強調するが、導入にはフル規格化を目指して旗を振る山形県はもちろん国やJR東日本などの賛同が不可欠で、実現の見通しは不透明だ。(酒田支局・亀山貴裕)

◎沿線自治体が提唱「発想の転換して」

 「日本の鉄道は低速の在来線か高速の新幹線しかない。中間の中速鉄道は、新幹線よりも短期間でコストも抑えて整備することができる現実的な選択肢だ」
 酒田市で11日に開かれた講演会で、JR西日本の社外取締役も務めた曽根悟東大名誉教授(交通システム工学)が指摘した。
 曽根氏は、高速鉄道の技術開発の過程で中速鉄道が普及した中国や欧州の事例を紹介。「低重心車両の導入や急カーブの緩和、遠心力対策などを施すことで、東京-庄内間を2時間40分台で結ぶことも可能だ」と国内での導入を訴えた。
 講演会は、酒田市や庄内町、戸沢村でつくる「陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会」が主催した。協議会は福島-新庄間148キロを最高時速130キロで結ぶ山形新幹線を、陸羽西線の軌道に沿って庄内地域まで50キロ余り延ばすよう県に働き掛けてきた。
 曽根氏らの提言を基に協議会は、山形新幹線の既存の線路の改良などで速達性を高めた上で庄内まで延ばす構想を新たに掲げる。専用の線路を要し、国の整備計画への格上げも順番待ちの状態となっているフル規格化に比べ短期間で、しかも数分の1の事業費で実現できるという。
 協議会の会長を務める丸山至酒田市長は「フル規格化は四国や山陰など競合地域が多く、国の整備予算も限られる。フル規格化を否定はしないが、中速鉄道への発想の転換は国や県全体の利益にもなる」と強調する。
 協議会の理論的支柱で交通コンサルティング会社ライトレール(東京)の阿部等社長は「膨大な費用と時間を要する整備新幹線計画そのものを見直すべき時期に来ている。中速鉄道への理解が広く浸透すれば、全国初の事例として山形が突破口となることも夢ではない」と話す。
 しかし県は現在、フル規格新幹線実現の訴えを強めている真っ最中。
 吉村美栄子知事は昨年5月、県内の自治体や経済団体などに呼び掛け奥羽新幹線(福島-秋田間)と羽越新幹線(富山-青森間)の早期実現を求める整備実現同盟を設立。本年度は秋田県などとプロジェクトチームを発足させ、フル規格新幹線の整備効果などについて調査検討を進める方針を示している。


[中速鉄道]明確な定義はないが、日本の場合は最高時速130キロ未満の在来線と、同250キロ前後を超えるフル規格新幹線の中間の速さで都市を結ぶ鉄道とされる。国内では上野-成田空港間を最高時速160キロで結ぶ京成電鉄のスカイライナーが当てはまる。