青森県の中小自治体で、独自の教育スタイルを模索する動きが出ている。県教委が人口減少に伴う高校再編の合理化策を示したことへの反発が引き金になった。地域の地域による地域のための子育てを目指す「教育デモクラシー」の芽生えを探った。(むつ支局・勅使河原奨治、青森総局・丹野大)

<市長の怒り爆発>
 「究極の上から目線。看過できない。独自の教育策を打ち出す」
 県教委の高校再編計画が示された7月20日、むつ市の宮下宗一郎市長が怒りを爆発させた。
 むつ市は同日、新たな教育施策の概要を発表。市内の田名部高で、医学部進学を視野に入れた特別授業を開くことを明らかにした。夏休みや冬休みに予備校講師を招き、入試対策に乗り出す。
 むつ市の位置する下北地方は、青森市や八戸市といった都市部から遠い上、慢性的な医師不足が課題だ。高校再編を機に地元の高校に医学部進学・特進コースを設けるよう県教委に要望していた。
 要望は一顧だにされず、県教委は、むつ市の別の高校の閉校案だけを提示。「コースの設置は校長の裁量でできる」(県教委高校教育改革推進室)と突き放す。
 宮下市長は「再編計画は民意を全くくんでいない。まずは自分たちでできることから取り組む」と語る。
 五戸町は、隣接する新郷村と町村立高校の設置を検討し始めた。県教委が県立五戸高の募集を2020年度に停止する計画を示したからだ。
 町、村と高校存続を求める団体が7月25日に会合を開き、公立だけでなく私立としての受け皿も検討し、1年以内に結論を出すことを確認した。

<地域住民が署名>
 五戸地方は八戸市と十和田市に挟まれた過疎地で、ブランド牛の倉石牛や馬肉で有名。五戸高はサッカーの古豪で、元五輪日本代表監督の手倉森誠氏(サッカー日本代表コーチ、元J1仙台監督)やJ1柏の下平隆宏監督の出身校でもある。町の祭りやイベントで学校が果たす役割は大きく、地域住民約9000人が存続を求める署名簿に名を連ねる。
 町の担当者は「高校がなくなると、地域を担う人材が育たなくなり、地域がますます衰退してしまう。何とか存続の道を探りたい」と話す。

<質の向上が目的>
 県教委の再編計画は、1学年4学級(160人)以上を確保するため、18~22年度に全日制課程12校の統廃合を目指す。
 県教委高校教育改革推進室の佐藤禎人室長は「コストの問題ではない。教育の質を高めることが目的。社会に出る前に切磋琢磨(せっさたくま)するには一定の規模が必要だ」と理解を求める。
 弘前大地域未来創世センター長の李永俊教授は「教育の多様性と質を確保するためにも、一律の統廃合がいいとは限らない。地域を守るのは地域の知恵で、新たな動きは評価できる。地域教育が充実すれば、UIJターンの要因にもなる」と話す。