猫魔ケ岳の妖怪 八百板洋子 再話 斎藤隆夫 絵

 表題作の「猫魔ケ岳の妖怪」をはじめ、福島県会津地方や中通り地方で語り継がれてきた四つの伝説を収めた絵本だ。
 伝説は昔話と異なり、実際にあった話として伝承されている。4作とも、福島の緑豊かな大地を舞台に、人間は自然とどう関わるべきかを問い掛けている。
 大地がもたらす恵みへの感謝を忘れなかった人々の心の温かさを伝える一方で、自然と共存することの難しさも描いた。子どもだけでなく、大人が読んでも得るものは多いだろう。
 「猫魔ケ岳の妖怪」は会津地方の伝説。人間に山に捨てられ、妖怪になった猫と、妖怪退治を命じられた若い猟師との心の触れ合い、悲しい別れを描く。現代人の心にも深く染み込んでくる内容だ。猫にどれほどの罪があったのか、妖怪は何を意味しているのか。多くのことを考えさせる。
 「大杉とむすめ」は吾妻山麓にある古い杉の木の精霊と恋に落ちた娘の物話。精霊は大地の象徴なのだろう。「天にのぼった若者」と「おいなりさまの田んぼ」は、人々の自然への感謝、畏敬の念を伝える。
 再話の八百板さんは福島市出身。翻訳家として広く活躍し、日本翻訳文化賞、日本エッセイストクラブ賞などを受賞した。日本民話の会に所属、民話の採集、研究も行っている。
 福音館書店03(3942)1226=2160円。