河北新報社が実施した東日本大震災の初動対応に関するアンケートでは、被災市町村の6割弱が「検証した」と答えた。ただ、アンケート結果と公表済みの検証報告書を分析すると、項目や手法、深度などにばらつきがあることも分かった。検証の捉え方の温度差が背景にあり、現場からは国が検証を災害対応に明確に位置付ける必要性を指摘する声が出ている。
 岩手では釜石市や宮古市が「通信・情報連絡」「避難指示・誘導」「避難所の開設・運営」など20前後の項目を設定して検証した。
 宮城では名取市が「職員の緊急配備」「情報伝達」「避難指示」「防災行政無線」「住民避難」など約60項目について、震災当日から時系列で検証したのが特徴的だ。課題を抽出して対応策を明示し、市ホームページに掲載している。
 多くの市町村は証言を重視する。津波で職員443人のうち111人が犠牲になった陸前高田市は、生存した全職員に聞き取りやアンケートを実施。震災当日からの行動を場所ごとに報告書にまとめた。
 職員の犠牲に伴い、救助活動、災害対策本部や自衛隊など関係機関との調整会議の運営が困難になった経緯をたどり、「市職員の退避基準が定められていなかったこと」を最大の教訓にして改善を図った。
 検証に着手できない福島では「時間との闘い」(大熊町)と捉え、記録と証言に特化した。富岡町の記録誌は震災発生から3年間の町の動きを時系列に記載。津波と原発事故の二重の対応に混乱する様子を赤裸々に記し、今後の検証の重要な資料となるはずだ。
 一方で、住民へのアンケートや聞き取りが中心だったケースや、「地域防災計画改定のための基礎的な調査」(多賀城市)、「地域防災計画に反映しているので個別に検証報告書は作らない」(仙台市)という自治体もあった。
 自由記述では、検証の在り方を課題に挙げる声が相次いだ。石巻市は「市町村は住民対応に多忙で、検証作業の優先順位は低い。記憶に依存する部分は時間の経過とともに、正確な検証が困難となる」と県の支援を期待する。国に対しても「検証項目が違うと、全体的な総括判断が難しくなる。項目を統一してほしい」と訴える。
 福島県川俣町は「そもそも防災計画で原子力災害は想定していなかった。何を基準に検証すれば良いのか」と問題提起した。

◎まとめ方/「報告書」最多10市町

 東日本大震災の初動対応検証アンケートの主な結果は次の通り。

 検証結果のまとめ方(複数回答)の問いでは、「報告書の作成」が最多の10市町だった。「住民報告会の開催」「議会に報告」「記録集に添付」が各3市町、「広報誌に掲載」が2市町、「シンポジウムなど」が1市。「その他」16市町村は、地域防災計画に盛り込むなどした。
 報告書など成果の公表の有無については「公表済み」が17市町村で、検証済み市町村の70.8%だった。「公表予定」が1市に対し、「非公表」は8市町村。1市は無回答だった。このうち12自治体がホームページで公開している。宮城県内の自治体で非公表の理由は「検証結果を基に地域防災計画の改定を行うため、個別の公表は予定していない」(仙台市、女川町)、「役場内部の基礎的検証のため」(利府町)などだった。

◎対策の妥当性/14市町村訓練で確認

 検証で得た教訓を対策に位置付け、訓練などで実際に妥当性を確認したかどうかも尋ねた(複数回答)。「訓練で確認した」が最多の14市町村。「確認する予定」6市町村、「机上で確認」4市町、「その他」4市と続いた。「確認の予定なし」はゼロだった。
 「その他」では、宮古市が「津波避難計画、その他各種マニュアルは策定段階で地域住民とワークショップを行い、意見を取り込んだ」と説明する。
 原発事故で避難区域に指定された田村市は「実際の災害対応で確認中」と回答。災害対策本部が現在も設置されており、教訓を現場で確認しながら実効性を高める作業をしている。

◎未着手の理由/「余裕なし」12市町村

 検証を行っていない理由(複数回答)では、「職員や時間に余裕がない」が12市町村、「復興事業が終わっていない」が7市町村、「予算が確保できない」が1町、「その他」、無回答が各1町だった。
 「今後行う予定」は宮城県南三陸、福島県双葉、大熊各町と飯舘村の4町村。着手は飯舘村が17年度中、双葉、大熊両町が18年度中、南三陸町は未定とした。
 全村避難から一部地域を残して今年3月に避難指示解除となった飯舘村は、検証とともに「原子力災害などを含む防災計画、避難計画などの策定に着手したい」と答えた。

◎開始時期/8市町村が11年内に

 検証の時期を尋ねたところ、震災が発生した2011年内に着手したのは8市町村(岩手4、宮城3、福島1)で、検証した自治体の33.3%に当たる。翌12年が5市町、13年1町、14年2市村、15、16年が各1町で、今年検証に着手したのは気仙沼市、福島県浪江町、楢葉町の3市町だった。
 11年に着手した岩手県山田町は町職員と住民、有識者らによる組織を主体に職員、住民らの聞き取りを実施した。いわき市は11年12月、地域防災計画の大幅見直しを決定。その際、職員と住民アンケートを実施したほか、当時の行政資料を精査し検証した。

 アンケートで、初動対応の検証についての課題や所感の自由記述に寄せられた全回答は、河北新報オンラインニュースPC版、デジタル紙面の「詳報」でご覧になれます。