闇のかなたの水平線がぽつり、またぽつりと光り始めた。夜が深まるにつれ、灯火は数と輝きを増やしていく。まるで空から星が舞い降りたかのよう。
 青森県外ケ浜町三厩(みんまや)の沖合はスルメイカのシーズンたけなわ。なぎの夜、集魚灯を下げた船が津軽海峡に繰り出す。
 マグロ一本釣りの餌に使うイカを狙って、小型船の第8康洋丸も出漁した。1人で乗り込んだ田中渉さん(45)は「くらくらするほど海は明るいよ」。
 陸(おか)を振り返ると、暗い海を隔ててオレンジ色の明かりが広がるという。民家の明かりでなく街灯。海沿いに家が立ち並ぶが、空き家も少なくない。「子どもの話し声をあんまり聞かなくなった」と田中さん。
 イカ漁の様子が気になるのだろうか。旅館のおかみさんが、白くまばゆいいさり火を眺めていた。大漁になれば街も活気づく。(文と写真 写真部・長南康一)

<メモ>イカ釣り船の集魚灯の光度や形はさまざま。9トンクラスの小型船の場合、直径約30センチの白熱電球を約40個備えていた。1個で約2000ワットだという。三厩沖のスルメイカ漁は例年、初夏から年末までの半年間ほど続く。