任期満了に伴う鶴岡市長選が8日に告示され、15日に投開票となる。市は2005年に旧5町村と合併して以来、観光業の振興と新産業の創出で人口減に立ち向かおうとしてきた。出羽三山観光や大学発ベンチャーの相次ぐ誕生といった一定の成果が見え始めた一方、旧町村部では小中学校の統廃合や公共施設の縮小などで住民に「置き去り感」が広がる。山形県第2の都市の戦略に揺らぎはないか、現状を探った。(酒田支局・亀山貴裕)

<住民有志が運営>
 市南東部の旧朝日村。田園地帯に立つ小さな温泉施設「ぼんぼ」の中は、明るいうちからお年寄りのおしゃべりでにぎやかだ。
 施設は1993年、旧朝日村が開設した。合併後は市が引き継いだが、入館者数は年々減少しており、市は昨年9月、採算の悪化を理由に、新たな運営先が見つからなければ廃止する方針を示した。
 住民有志は存続を求めて署名運動を展開。最終的に有志が管理運営組合をつくり、施設を引き受けることで決着した。温泉施設の水道光熱費は市が負担するが、改修が必要になれば、原則として組合負担となる。
 「住民の健康づくりという当初の目的が、合併でいつの間にか脇に追いやられてしまった」と嘆く組合の菅原和則事務局長。「地域の人口が減る中、いつまで続けられるだろうか」との不安がつきまとう。

<教育施設を統合>
 合併後、市は職員数を全体で4分の3に削減。特に本庁舎以外は人員の7~6割を減らした。公的施設も11年度からの5年間に15施設を廃止、9施設を統合、39施設を民間に委譲したり貸与したりしている。
 旧朝日村である朝日地域でも、3校あった小学校は1校に、四つの保育園も一つに統合された。地域庁舎の職員は3分の1に減り、人口は合併後の12年間で2割以上減った。旧町村部選出のある市議は「振興策を考えようにも、地域庁舎は権限も財源もない。地元は諦めに近い感情を抱いている」と解説する。
 市総務部の高橋健彦部長は「合併で拡大した財政規模を生かし、まとまった財源を捻出して地域をけん引する産業を育て、人口減を止める。それが合併市町村の共通認識だったはず」と理解を求める。

<観光客は県内一>
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は14年、出羽三山の精進料理や豊富な在来作物を有する鶴岡を国内唯一の「食文化創造都市」として認めた。日本遺産も市内で2件登録され、16年度の延べ観光客数は653万人と県内自治体ではトップを走る。
 誘致17年目の慶応大先端生命科学研究所からは、ベンチャー企業が6社誕生。市と県が毎年3億5000万円ずつ先端研を支援し続けた結果、バイオ産業の拠点に成長しつつある。
 いずれも市の取り組みが成果を収めていると言えそうだが、地域経済を引っ張る力強さには欠ける。旧町村の先行き不安への配慮が欠かせなくなっている。