東京電力福島第1原発事故を巡り、福島県内外の3824人が国と東電に空間放射線量の原状回復や慰謝料計約160億円などを求めた訴訟の判決が10日、福島地裁で言い渡される。原発事故被災者集団訴訟の判決は今年3月の前橋、9月の千葉の各地裁に続き3例目。これまで2例ともに認めた巨大津波の予見可能性、一方が認めた国の責任が、それぞれどう判断されるかが最大の焦点となる。
 原告は全国で約30件に上る同種の集団訴訟で最も多い。事故当時の居住地は福島県内全59市町村や隣接する宮城県などで、避難区域外が9割近く、大半が地元にとどまった。
 巨大津波について原告側は、第1原発敷地(海抜約10メートル)を超える高さの襲来を予測できたと指摘。過去2例の裁判と同様、国が2002年に公表した大地震の発生確率を示す「長期評価」などを根拠に挙げた。
 その上で、東電が非常用電源をさらに高い場所に設置するなどの対策を取っていれば事故を防げたと訴えている。
 長期評価について、国と東電は「科学的知見として未熟だった」などとし、実際に発生した規模の津波の予見可能性を否定。仮に対策を取っても間に合わなかったと主張している。
 国の責任に関して、原告側は東電に対策を命じる規制権限があったとし、「当時は権限がなかった」とする国と対立してきた。
 前橋、千葉両地裁はともに、長期評価の合理性を認めて予見可能性と国の規制権限を認定。ただ国の賠償責任は、千葉地裁が「対策を取っても事故を回避できなかった可能性がある」と原告の主張を退けた。
 国の「中間指針」に基づく東電の賠償の妥当性も争われており、原告側は「(指針は)最低限の賠償にとどまる」とし、対象地域と期間を含む賠償の拡大を求めた。
 福島地裁は昨年3月以降、現地検証を実施。放射線量が比較的高い帰還困難区域の福島県双葉町や風評被害を受けた福島市の果樹園を裁判官が訪れ、原告の被災者から話を聞いた。