◎安保・改憲/争点を歩く

 衆院選(22日投開票)が10日公示され、与野党の論戦は本番へ突入する。前哨戦は、解散の「大義」とされた安全保障法制や憲法改正、消費税再増税と使途、経済対策を巡る賛否が各地で交錯した。東日本大震災の被災地は今なお課題が山積しており、選挙戦では復興の在り方の議論も注視される。争点の断面を、東北の現場から報告する。(衆院選取材班)

<与党も温度差>
 国家の背骨を貫く大典は、党略にもまれながら浮き沈みを繰り返す。
 4日夜に福島市であった自民党前議員亀岡偉民(福島1区)の総決起大会。応援に駆け付けた経済産業相世耕弘成は「あの時、法律を通しておいて本当に良かった」と繰り返した。
 2015年9月、「憲法違反」の批判が国会内外に渦巻く中で成立した安全保障関連法。緊迫の度を増す北朝鮮情勢に、世耕は「米国と密接に連携できるのは、安保法制があるからだ」と意義を説いてみせた。
 自民は政策パンフレットの冒頭で「北朝鮮の脅威から国民を守り抜く」とうたう。首相安倍晋三が言う「国難」。厳しい外交、安全保障環境を逆手に、政権担当能力の誇示をもくろむ。
 「戦後初の事態だ。毅然(きぜん)とした日本であるべきだということを総選挙で国民に問いたい」。自民前議員の鈴木憲和(山形2区)は9月30日、米沢市で開いた会合で大義を力説した。
 自民は公約で、憲法改正と9条への自衛隊明記に踏み込んだ。安保法制には賛成した公明党だが、5日に発表した公約では改憲に慎重な姿勢を崩さず、「争点にならない」(公明関係者)とけん制する。
 鈴木が会合で「国政の課題」として挙げた北朝鮮情勢、コメ政策、憲法改正、消費税増税のうち、改憲には触れずじまいだった。
 自民1強に対抗し、政権交代を担える勢力を目指す希望の党。民進党から転じた公認希望者に「現実的な安保政策」「憲法改正」への支持を盛り込んだ政策協定書への同意を迫った。

<「署名できず」>
 「考え方が違った。深く悩んだが署名できなかった」。無所属での立候補を表明した民進系前議員金子恵美(福島1区)は4日に福島県庁で開いた記者会見で、決断の理由を説明した。
 希望の安保政策、改憲の立ち位置は自民との対立軸になっていない。それをのみ込めなかった金子。「国民的議論には至っておらず、簡単に改憲と言えない。手続きに問題のある安保法制は白紙撤回が必要だ」と訴える。
 「希望も民進も関係ない。『9条を変えるな』はコンテツの遺言だった」。希望の公認を得た前議員近藤洋介(山形2区)は9月30日に南陽市であった市民団体主催の集会で、父で元労相の故鉄雄の名前を挙げ、「憲法違反の戦争法は廃止」などと力説した。
 会場で新党への不満をぶつけられ、無所属での立候補を促された近藤。希望との合流に「大きな違和感がある」と述べつつ、「暴走する安倍政権を倒すためだ」と釈明に追われた。
 共産党新人の岩本康嗣(山形2区)は安保法廃止、憲法9条改正反対を訴える。(敬称略)