東日本大震災の発生から6年7カ月となった11日、東北の被災地を含む衆院選(22日投開票)の選挙区では、沿岸部や災害公営住宅で復興加速を訴える候補者がいる一方、被災地を離れて内陸で支持を呼び掛ける候補者もいた。なりわい、住まい、原発事故対応など震災を巡る課題がいまだ山積する中、被災地の有権者から復興議論の埋没を懸念する声が上がった。

<誰に投票?>
 宮城県山元町(宮城3区)のイチゴ農家岩佐国男さん(75)は、復興や農業を巡る論戦の低調ぶりを嘆く。「みんな誰に投票すれば良いのか分からないのではないか」と、被災農家の思いを代弁する。
 区割り改定で岩手2区となった岩手県山田町で水産加工会社を営む鈴木司さん(74)は、国の支援制度の手続きが煩雑で再建した工場への機器導入が進んでいない。「どの政党幹部も復興を本気で考えているように思えない」。憲法改正や安保法制がクローズアップされる選挙戦への不満を隠さない。
 進まない住宅再建へのいらだちも聞かれた。
 陸前高田市(岩手2区)の介護施設職員貝山隆三さん(69)は、家族4人でのプレハブ仮設住宅暮らしが続く。中学3年と小学6年の子どもたちに4畳半二間は手狭だが、宅地造成が終わるのは1年半先だ。「東京五輪で復興が遅れてしまわないか」と懸念する。
 宮城5区に編入された南三陸町の災害公営住宅で暮らす主婦小野寺ツエ子さん(72)は、地域コミュニティーの維持に不安を抱く。「周りは1人暮らしの高齢者ばかり。買い物する場所も近くにない」とソフト面の支援を求める。

<古里戻れず>
 避難指示の解除を受け、8月にいわき市から地元の災害公営住宅に移った福島県富岡町(福島5区)の主婦黒木さち子さん(61)は、原発事故を巡る論戦に物足りなさを感じる。
 自宅は帰還困難区域にあり、いつ戻れるか見通せない。仕事も失った。「喉元過ぎると忘れられてしまうのかな」と政治との距離を嘆く。
 公示日の10日に国の責任を認める福島地裁判決を得た原発事故集団訴訟の原告の一人、相馬市(福島1区)の自営業阿部一枝さん(64)も「この6年7カ月、福島は置いてきぼりだ。政治家は政策よりも選挙に勝つことしか頭にないのではないか」と憤る。