東日本大震災を機に始まり、聴覚障害者に代わってオペレーターが電話をかける「電話リレーサービス」の制度化を求める声が高まっている。電話しか連絡方法がない場合に役立ち、メールやファクスより即時性や双方向性に優れるが、公的支援の不足や認知度不足などから東北でも普及は進んでいない。利用者は「聴覚障害者も当たり前に電話が使える社会になってほしい」と訴える。
 電話リレーサービスは、震災で被災した聴覚障害者を支援するため、日本財団が2011年にモデル事業として開始。13年に全国展開した。全国7事業者に業務を委託し、約120人のオペレーターが対応している。
 今月7日現在、全国で約6200人、月約1万5500件の利用がある。東北6県は聴覚障害の障害者手帳保有者が約3万1500人なのに対し、登録者は224人(青森21人、岩手22人、宮城101人、秋田7人、山形36人、福島37人)にとどまる。
 秋田県聴力障害者協会理事の加藤るり子さん(48)=秋田市=は8月に登録し、3、4回利用した。「これまでは美容院や飲食店の予約は親や友人、仕事の際は同僚に頼んで電話をかけてもらっていた。いつも相手の都合を考えてお願いしていたが、リレーサービスなら気兼ねなく電話できる」と話す。
 普及が進まない要因の一つが公的支援の不足。日本財団の本年度の事業費約3億円のうち、補助金は厚生労働省の約1150万円だけ。オペレーターを十分に確保できず、24時間の対応は難しい。
 緊急通報への対応も課題だ。今年6月、愛知県三河湾沖で聴覚障害者4人が乗ったボートの転覆事故が発生。リレーサービスに救助を求める連絡が入り、地元海保に取り次いで約4時間後に全員が救助された。
 しかし、本来はオペレーターの責任問題になりかねないため緊急通報への対応は受け付けておらず、対応は例外的だった。
 海外では米国やタイなど20カ国以上でリレーサービスが公的に実施されているが、日本は現段階で導入の動きはない。
 加藤さんは「電話は全ての人が等しく使えるはずの社会インフラ。国は公共サービスとして整備してほしい」と強調する。

[電話リレーサービス]耳や言葉の不自由な人が電話をかける際、テレビ電話を通じた手話や文字のチャットでオペレーターに用件を伝え、オペレーターが相手先に電話をかけ、同時通訳する仕組み。事前に登録すれば原則、無料で使える。利用時間は午前8時~午後9時。