上閉伊酒造(岩手県遠野市)が冷蔵庫増設の資金調達のため実施したクラウドファンディング(CF)が、わずか3日間で目標額の540万円に達した。1789年創業の老舗酒蔵を率い、12月に社長就任3年目となる新里佳子さん(49)は「驚いた。『いい酒を造ってほしい』という期待を感じる」と気を引き締める。

 インターネットで出資を募るCFを活用し、15日に募集を開始。首都圏を中心に157人が出資し、17日に目標を達成した。資金の一部は商談会や物産展への参加販促費に充てる。
 上閉伊酒造はビールも製造しており、既存の冷蔵庫だけでは手狭な状態。台湾などへの輸出を見据え、日本酒の品質管理のためにも増設が不可欠だった。
 「CFのウェブサイトを通じてイベントなどの情報を発信し、全国にファンを増やしたい」と新里さん。地方の小さな酒蔵ならではのCF活用の狙いを話す。
 新里さんは2014年12月、社長を引退する義姉から跡を継ぐよう頼まれ、酒造りの世界に飛び込んだ。
 酒蔵の業務を学んでいた15年2月、社長就任を後押ししてくれた夫滋さん=当時(60)=が病で亡くなった。それでも「社員を抱えている以上、目の前の仕事をやるしかない」と前を向いた。
 会社は厳しい経営が続き「今までと同じことをやっていてもジリ貧になる」。自らイベントに足を運んで営業し、異業種との連携や新商品開発に力を入れた。
 昨年からは遠野市の農園などと共同で国内最大級のビールの祭典「横浜オクトーバーフェスト」に参加。今年6月には、東日本大震災の津波に耐えた稲穂からNPO法人が育てたコメで造った純米酒を発売した。
 新里さんは「不安だらけの中、多くの人の支えでやってこられた。今後も人とのつながりを大切にし、遠野で唯一の酒蔵を守り続けたい」と力を込める。