東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県山田町は、町民の避難の教訓などをまとめた記録誌を発行した。70人以上の証言を集め、研究者らの協力で被害の特性や住民の避難行動などを検証した。町は「学術的な分析を踏まえ、災害対策や防災意識の向上につなげたい」と話す。
 タイトルは「3.11 残し、語り、伝える 岩手県山田町 東日本大震災の記録」。「残す」「語る」など全5章構成で、被害や避難の状況を詳述した。
 写真やグラフなどを多く掲載し、中心部で発生した大規模な津波火災については消防団員らの証言に専門家の分析を交え検証。津波にのまれ、9人が犠牲となった指定避難場所の状況にも迫った。
 第3章「伝える」では、宮古市出身で鹿児島大総合教育機構共通教育センターの岩船昌起教授(地理学)らの協力を得て住民の避難行動を分析。9地区の計15人のインタビューと地形条件などを基に、避難までの時間を推定した。
 その結果、実際の避難行動は必要な物を探したり持ち出したり、知人宅に寄るなどして高台までの通常の所要時間より20分近く多くかかったことが分かった。
 岩船教授は「避難行動には個人的な事情が大きく関わる。津波が来ることを前提に判断、行動する力が必要。一定の体力の維持も重要だ」と指摘した。
 編集を担当した町任期付き職員の佐藤孝雄さん(51)は「二度と犠牲者を出さないという方針に沿って作成した。後世に伝えるべき教訓として、多くの人に活用してほしい」と語る。
 A4判、272ページ。7000部を作成し、町の全世帯と応援職員の派遣元の自治体などに配布した。町のホームページでも公開している。