◎伝統こけしの本 萩原健太郎 著

 伝統こけしの産地は東北6県全体に広がる。青森県の津軽系から福島県の土湯系まで、一般的に11系統に分類される。中でも宮城県は、こけし発祥の地とされる作並温泉の作並系や、鳴子系、遠刈田系と有力な系統が集中している。
 本書は、11系統全てのこけし工人へのインタビューを中心に構成する。個性豊かな生き方や各産地の現状、後継者育成などの課題を巡る工人たちの言葉を丁寧に紡ぐことによって、伝統こけしとは何かを、多角的に浮かび上がらせた。
 遠刈田系の佐藤英太郎さんは「時代の中で育まれたクリエイティブなものが必要だ」と言い切る。土湯系の陣野原幸紀さんは「伝統は時代の流れに沿って、需要に応じて変わっていける。だから飽きることがない」と語る。伝統とどう向き合うべきか。工人たちのプライドがうかがえ、興味深い。
 カラー写真やイラストをふんだんに使い、各系統の構造、形態、描彩を解説。多くの工人の作品を紹介する。11系統の顔や頭頂部、胴のデザインを比較する欄や、製造工程を詳しく説明するコーナーもあり、初心者から本格的な愛好家まで楽しめる手引書となった。
 著者は1972年生まれ。大阪府出身のライター、フォトグラファー。
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