岩手県の秋サケ漁獲量が低迷している。東日本大震災で被災したふ化場などの施設復旧が進んでも好転しない。岩手の水産業復興の要となる存在だが、このままでは増殖事業への影響も必至だ。県は沿岸水温の上昇が一因とみて、成魚の回帰率向上を目指す実証試験を進めている。
 県内の放流数と漁獲数はグラフの通り。放流数は4億3000万~4億4000万匹でほぼ推移し、震災の影響で一時激減したものの、4億匹程度に回復した。
 一方、漁獲数は1996年度の2400万匹をピークに減少し、震災があった2011年度は280万匹まで落ち込んだ。今年は放流数が震災前に近い水準に回復した稚魚の回帰時期に当たり、漁獲数は前年を上回ると期待されたが、厳しい状況が続く。原因について県水産技術センター(釜石市)は、放流時期の3~5月の沿岸水温が近年上昇傾向にあることに着目。水温の上がる速度も増しており、稚魚の生存と成育に厳しい環境になっているとみる。
 センターの横沢祐司漁業資源部長は「生き残る稚魚が減り、成魚の回帰率の低下につながっている可能性がある」と指摘する。
 不漁は川をさかのぼってきたサケからの採卵とふ化、稚魚放流で成り立つ増殖事業にも影を落とす。
 海で捕ったサケを確保して採卵を進めるが、11月末時点で県全体の採卵計画の83%にとどまる。
 秋サケ資源回復に向けてセンターは14年度から、回帰率の高い稚魚を育てる実証試験に取り組んでいる。
 密度や餌の種類を変えて生産した稚魚を放流。回帰率の違いから効果的な飼育方法を探る。餌の違いによる飢餓への耐性や泳ぐ力の変化も調べる。
 初期に放流したサケの回帰が今季始まり、今後も数年がかりの調査が続く。横沢部長は「何とか秋サケ漁復活の手掛かりを見つけたい。成果は逐次現場と共有し、ふ化場向けの手引き改定に生かす」と説明する。