国の自動車安全特別会計から一般会計に貸し出された約6100億円が、2018年度に返還期限を迎える。特会は、交通事故で重度障害を負った被害者の救済事業などに充てるのが本来の目的。所管する国土交通省が財務省に返還を再三要請しているが、期限の先延ばしが何度も繰り返されている。被害者側は救済事業への影響を懸念する。

 特会は、自動車ユーザーが支払う自動車損害賠償責任(自賠責)保険の保険料が原資。1994、95年度に1兆1200億円を一般会計に貸し出したが、2003年度を最後に返還が滞り、17年度末で6169億円が未返還となる見込みだ。
 被害者救済事業には年度ごとに130億円前後が必要で、特会の積立金から100億円程度を取り崩して充てている。このため02年度に2545億円あった積立金残高は、17年度末に1786億円まで減少する見込み。事業の先行きを危ぶむ声も出ている。
 財務(前大蔵)省から国交(前運輸)省への返還期限は表の通り。両相の合意で過去に4回も先送りされた。年末の18年度予算編成を目前に両省が折衝を続けているが、今回も再延長される可能性がある。
 返還問題は11月29日の参院予算委員会で取り上げられ、麻生太郎財務相は「被害者のニーズに基づき、充実を図ることが必要なことを十分に踏まえて検討したい」と返還を明言しなかった。安倍晋三首相も「国全体、国民のことを考えて財務相が判断する」と述べるにとどめた。
 特会は民主党政権下の10年に政府の事業仕分け対象となり、被害者救済の強化を条件に現行制度の維持が認められた経緯がある。救済に逆行するような現状に被害者側は焦りと憤りを募らせる。
 仙台市太白区の阿部憂太さん(31)は高校2年だった2004年2月に交通事故で重い意識障害になり、特会により全国4カ所で運営される交通事故被害者専門施設の一つ、東北療護センター(太白区)で治療と介護を3年間受けた。
 遷延性意識障害の患者家族らでつくる「宮城県ゆずり葉の会」副会長を務める父の順一さん(52)は「誰もが交通事故の被害者になり得る。自賠責が目的外に使用されている現状に国民は関心を持つべきだし、財務省は少しずつでも返還する姿勢を見せてほしい」と訴える。