東北の横軸、仙山圏には日本酒に加え、ワインやビール、ウイスキーから焼酎まで、名だたる銘酒の産地が東西に連なる。月内には国際ワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2018SAKE部門」の山形開催が決まる見通し。酒の話題が地域を盛り上げてくれそうな一年の始まりに、豊かな食文化や行楽を彩る仙山圏の酒造りの現場を訪ねてみる。

◎金龍(酒田市)

 仙山圏で唯一、蒸留を繰り返す甲類焼酎を造っている酒田市の金龍は、出羽山地と日本海に挟まれ、遠く鳥海山を望む田園地帯にある。
 同社は1950年、酒田市と山形県遊佐町の酒蔵9社の共同出資で誕生した。当初は山形県醗酵(はっこう)工業という社名で、主に日本酒の品質調整に使う原料用アルコールを製造し、庄内や最上地方の酒蔵に販売していた。
 66年に金龍に改めたが「実は金龍の由来がはっきり分からない」と佐々木雅晴社長(65)は苦笑いする。歴代社長は出資企業の出身で、佐々木社長も酒田市の菊勇から転じた。
 同社の転機は昭和50年代の焼酎ブームだった。時流に乗って1981(昭和56)年に「ニュー爽(さわやか)」を発売。「飲んで爽やか朝スッキリ」のキャッチフレーズで地元を中心に浸透し、今も売り上げの4分の1を占めるロングセラー商品になった。
 一方、原料用アルコールの割合は焼酎の生産増に反比例して減少し、現在は1%にとどまる。
 「ニュー爽」は、トウモロコシやサトウキビに酵母を加え、醸造タンクで発酵させた後、連続式蒸留機で何度も蒸留。最後に鳥海山の伏流水とアルカリイオン水を独自にブレンドした水で仕上げる。
 佐々木社長は「丁寧に蒸留を重ねることで不純物が取り除かれ、癖のないまろやかな味わいになる」と話す。年間の生産量は1450キロリットル。取引先は県内が95%を占め、一部は宮城、新潟両県にも出荷する。
 瓶詰めラインの様子は、まるで遊園地。緑色の酒瓶はローラーコースターみたいに宙返りをしながら内部が洗浄され、メリーゴーラウンドのように円を描いて上下動するうちにノズルから焼酎が注がれる。栓をした後は連なるようにローラーを流れ、最後はロボットアームで箱に収まる。
 甲類焼酎のほかにも、仙山圏には蒸留が1回の乙類焼酎を手掛ける清酒会社が宮城に5社、山形に13社ある。多くは清酒を絞った際に出る酒かすを熟成、蒸留させて焼酎を造る。かす取り焼酎とも呼ばれ、コメ由来の風味が楽しめる。

[メモ]酒田市黒森草刈谷地180の1▽午前8時~午後5時(土日祝日休み)▽工場見学の受け入れや試飲は行っていない▽0234(92)4567

◎お供 コレが乙/名物 ハタハタの湯上げ/営業担当・成冨沙綾さん

 冬は体が温まる「ニュー爽」(720ミリリットル、790円)のお湯割りがお薦め。お湯と焼酎の割合は6対4で先にお湯、後から焼酎を入れると爽やかな香りとまろやかな甘みが引き立つ。
 庄内の冬の味覚「ハタハタの湯上げ」と一緒にどうぞ。昆布を入れた鍋でハタハタをゆで、しょうゆやたれ、薬味を付けて食べる。身はうま味があり、ブリコ(卵)は食感が楽しい。家庭料理だが、酒田市の「富重」など一部飲食店で食べられる。マダラの身をぶつ切りにし、骨や内臓ごと鍋に入れてみそで煮る「寒ダラ汁」もグラスが進む。

◎ちょっと寄り道

 山形県庄内地方では1月中旬から、各地で寒ダラ汁を味わうイベントが開かれる。会場と開催日は、鶴岡市の道の駅「あつみ しゃりん」が14日、鶴岡銀座商店街が21日、庄内観光物産館が21、27、28日、2月4日。酒田市のみなとオアシス酒田など3会場が1月27、28日、遊佐町のマルチドーム「ふれんどりぃ」は21日。
 新たな冬の名物としてPRしているのが、庄内浜で捕れた天然のトラフグ。酒田、鶴岡両市でフグ料理を提供する店が増えている。
 温泉も多く、酒田市に湯の台、鶴岡市に湯野浜、湯田川、由良、あつみ、遊佐町に鳥海、三川町になの花、庄内町に月の沢などがある。連絡先は庄内観光コンベンション協会0235(68)2511。