東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の複合災害に見舞われた福島県を災害後に視察した経験のある知事は6割を超える29人に上ることが、河北新報社のアンケートで分かった。避難指示が出された区域への視察経験者は多くなく、廃炉作業が続く第1原発に足を運んだのは8人。東北5県の知事は誰も避難区域や第1原発の視察経験がなかった。

 視察の必要性を認識し、今後の視察に意欲を示す知事は少なくなく、複合災害の教訓や復興の現状への理解を深めてもらう取り組みが、地元の福島県などに求められそうだ。
 アンケートは福島を除く46都道府県知事を対象にし、奈良を除く45都道府県が回答を寄せた。福島県内の視察経験はグラフ(1)の通り。経験者29人は回答者の64.4%だった。
 具体的な訪問先(複数回答)のうち、「福島第1原発」を挙げた8県は埼玉や神奈川、三重、佐賀など。浪江町や飯舘村など「避難指示が出たことのある地域」は11人、相馬市やいわき市など「津波被災地」は12人、福島市など「その他」は25人だった。
 三重の鈴木英敬知事は2017年10月上旬、郡山市の農産物直売所で放射性物質検査の体制などを確認。翌日は第1原発に入った。新潟の米山隆一知事は同9月に第1原発を視察し、地元の原発再稼働を巡り、原発事故の再検証の必要性を説いた。
 福島を除く東北5県のうち、村井嘉浩宮城県知事と達増拓也岩手県知事、佐竹敬久秋田県知事の3人は訪問先に福島市のみを記入。吉村美栄子山形県知事は福島市や喜多方市など内陸部を挙げ、三村申吾青森県知事は福島県内の視察経験がなかった。
 福島の現状把握などに向けた知事自身の視察の必要性は「大いに必要だ」が16人、「ある程度は必要だ」が15人となり、7割近くが必要性を指摘した。
 福島県や全国知事会などによる第1原発や避難区域の視察ツアーが企画された場合の対応はグラフ(2)の通り。「積極的に参加する」「参加を検討してもよい」が計26人に上った。

<実際の行動重要/開沼博立命館大准教授(社会学、いわき市出身)の話>
 原発事故後は被災状況の確認や支援の意味で福島県を訪問した首長が多かった。原発の是非が選挙の争点にもなる現状を踏まえると、(第1原発や避難区域に足を運ぶという)実際の行動に移しているかどうかは重要だ。(福島には)除染廃棄物の中間貯蔵といった社会的合意を得にくい課題解決や地方自治の先進的な現場がある。こうした視察の利点を伝えることが(地元など)発信する側には求められる。

[調査の方法]福島を除く46都道府県の知事を対象に2017年11月初旬、郵送または電子メールで調査票を送付。「原発事故後の福島県の視察・訪問経験や予定」「訪問による印象の変化」などを尋ねた。「差し控える」とした奈良を除く45都道府県から同12月下旬までに回答を得た。