ギョロ目に真っ赤な舌をぺろり。いささかおちゃめな顔つきをしているのは、能代凧(だこ)の「べらぼう」。秋田県能代市にある製造元「北萬(きたまん)」の北村功さん(70)とマツ子さん(68)の夫婦が伝統を守っている。
 創業して約130年にもなる北萬だが、凧の歴史はもっと古い。「北前船が能代の港に入る時、この凧を目印にしたという話が残っています。能代凧は真上近くに高く揚がりますから」と功さん。
 ほとんど顔だけの凧絵を描くのは、先代の娘さんでもあるマツ子さんの役割。かつて内装業や大工仕事を経験した功さんの方は、骨組みを作る。
 冬の能代は日本海を越えた強い風が吹き、江戸時代から凧揚げの技を競う大会が開かれていたほど。
 沖を行き交う船を助ける役目は終えたが、揚げれば今もよく目立つ。正月の空高く、ひょっこりこの顔が浮かんでいたら、やっぱり春から縁起がいい。(文と写真 写真部・安保孝広)

<メモ>能代凧の中で人気があるのは「男べらぼう」と「女べらぼう」。頭巾の絵柄に男はバショウ、女はボタンをあしらっている。半紙8枚分の本物の凧から、小さな縁起物まで大きさは6種類。凧作りの店はかつて市内に数軒あったが、今は「北萬」のみになった。