人と犬は今や、飼い主とペット以上の関係を築いている。人の心を支え、癒やし、時には命を救ってくれさえする。戌(いぬ)年の始まりに、東北で育まれた犬と人の強い絆を紹介する。

 「小学生男児が行方不明になった。捜してほしい」
 昨年7月下旬の未明、秋田県警の警察犬シェパード「マリー」(雌、2歳)に県央部の警察署から出動要請があった。パートナーで県警鑑識課の佐藤仁美巡査長(41)がマリーに男児の衣服のにおいをかがせ、男児の生活圏を中心に捜索を始めた。
 しばらくしても手掛かりがなく、捜索を終えようとした時、マリーが真っ暗な草むらに顔を出し入れし始めた。ライトで照らすと、男児が飛び出してきた。家出だった。
 マリーはその3カ月前、県警初の直轄警察犬となった。実際の現場で目標(捜索対象)を見つけたのは、この時が初めてだ。
 「本当は間髪入れずに『やったよ、できたよ』と褒めて成功体験を植え付けなければいけなかった。こちらがびっくりして、できなかった」。相棒としての自分の未熟さを痛感した。

 実家で飼っていた影響で、佐藤さんは幼い頃から犬好き。2002年に警察官となり、「警察犬と一緒に働きたい」との思いを強めた。
 6、7年前、飼っていた雌のラブラドルレトリバーと複数の競技訓練大会に出場した。自分の手で嘱託警察犬にしたかったが、いつ現場に臨場するかもしれず、外出の多い警察官は嘱託先になれなかった。
 数年後、思いがけない好機が来た。県警が直轄警察犬の導入と、共に出動して指示する「指導手」の候補者を警視庁に出向させることを決め、白羽の矢が立った。16年4月から1年間、警視庁で共に訓練を重ねた相手がマリーだ。
 「小さいなー」が第一印象。警戒心が強く、最初はほえられたが、すぐに懐いた。訓練で叱っても萎縮しない強気な性格に、警察犬としての素質を感じた。

 17年4月、東北初の女性指導手としてマリーと秋田に戻った。冬の名残がある秋田は寒く、周囲は見知らぬ人間だらけ。マリーはストレスで軟便や下痢が続き、26キロあった体重が瞬く間に22キロに落ちた。
 「何かあったらどうしよう」。24時間、マリーのそばにいることにした。犬舎に毛布を持参して泊まり、警視庁時代の上司に毎日電話で食事の工夫など助言を仰いだ。2カ月以上付き添い、マリーは次第に元気を取り戻した。
 「待て」「こらっ」。訓練では、険しい顔でマリーを制する。主従をはっきりさせないと、仕事にならない。「9割厳しく、1割褒める。ただ、どちらも愛情100パーセントで臨みます」
 昨年末までに犯罪捜査での出動15件、行方不明者の捜索で21件。マリーは実績を重ねるが、目標発見時は喜びのあまり目標物を前足で何度も引っかく。それを怒れば、見つけたこと自体が否定されたと誤解される。微妙なニュアンスをどう伝えるか、悩ましい。
 将来の名コンビは試行錯誤と共に県内を走り回る。(氏家清志)