波が彫刻刀となって削り出した巨大な塔がそそり立つ。中央の男岩は50メートル。20階近い高層マンションにも匹敵する。左側の女岩は23メートル、右側の太鼓岩でも17メートルあり、合わせて「三王岩」とあがめられている。
 「子供の頃、この周りは遊び場でした」と岩手県宮古市田老の自営業佐々木均さん(71)が言う。東日本大震災の直後、歩いて三王岩が見える高台に登った。
 津波を受けて岩が崩壊したのではと心配になったからだが、「以前と変わらず悠然とそびえ、左右に波を受け流していた」。
 男岩の岩肌は見事なしま模様。下の方は1億年以上も昔の白亜紀の砂礫(されき)層だという。7年前の津波は太古の地層に激突したはずだが、びくともしなかった。
 三王岩を巨大な津波が襲ったことは、過去にいくどあったことか。ことごとくはねのけてきた歴史が、立ち姿を神々しく彩る。(文と写真 写真部・及川圭一)

<メモ>旧田老町の宮古市田老地区は津波で甚大な被害を受け「津波太郎」と言われたほど。明治三陸(1896年)と昭和三陸(1933年)の両地震では、合わせて約2800人が犠牲に。その後、巨大防潮堤が建設されたが、2011年の東日本大震災でも181人が亡くなった。