国によるコメの生産調整(減反)が2018年産から廃止され、半世紀近く続いたコメ政策は大転換期に入る。国内有数の米どころで、農業産出額の多くを依存する東北。転機とどう向き合い、いかに先行きを見通すか。関係者に聞いた。

◎大潟村あきたこまち生産者協会社長 涌井徹氏

 -国による生産調整(減反)廃止をどう捉えるか。

<海外に売り込む>
 「秋田県大潟村は大規模機械化農業のモデル農場として始まった。しかし約半世紀前、コメを多く作ろうと21歳で村に入植したのと同時に減反が始まった。ようやく規制がなくなり、新しい発想で農業を考えられる時代が始まる」
 「秋田、東北の稲作農家にとって大きなチャンスだ。全国のコメ消費量は毎年平均で8万トン減り、規制は縮小再生産だった。これからは拡大再生産につなげられる」

 -県農業再生協議会による生産量の目安ができる。
 「縮小再生産と拡大再生産では農業の方向性が異なる。人口減少で国内市場は縮小しており、必然的に国外に出ていくことになる。消費が減るから生産も減らすとの意見もあろうが、それでは農業が衰退する」

 -どう対応すべきか。
 「米価をいかに下げないかという発想ではなく、生産を拡大し世界にマーケットをつくりながら生産コストを下げる。併せて付加価値の高い農業を創造すべきだ。農業の構造改革に手を付けないまま生産調整の延長線上をしていては生き残れない」

 -この半世紀、村はどう変わったか。
 「村は干拓地で排水が悪く、畑作ができない時代があった。そのため減反を巡ってもめた時代もあった。10年ほど前から加工米など新規需要米が転作作物となり、『コメならば』と減反が進んだ。さらに5年前からは排水溝が整備され、村内で畑作ができる状況に変わった」

 -新しい農業のスタイルをどう考えるか。

<畑作とセットに>
 「村内の平均水田面積は約18ヘクタール。面積を増やしたり生産コストを下げたりすることが考えられるが、そう簡単ではない。面積を増やさずに収入を上げる方法として、機械化できて換金性の高いタマネギがある。東北は北海道と西日本の両産地の端境期に出荷できる有利さがある」
 「大潟村農協は新年度に加工用タマネギの乾燥・調整・貯蔵施設を整備する。減反廃止後に村で畑作を進めるという大きなインパクトのある事業だ」

 -なぜタマネギなのか。
 「コメが売れないからタマネギを売るのではない。より積極的な取り組みだ。米と畑作をセットにして水田の生産能力を上げ、付加価値を高めていく。タマネギは稲作農家として生き残るための手段だ」
(聞き手は秋田総局・渡辺晋輔)