福島県南相馬市小高区で、地域の介護機能が徐々に回復しつつある。今冬に新たな通所施設がオープンし、区内初となる入所施設の再開も決まった。東京電力福島第1原発事故に伴う避難で一帯の高齢化率は高まっており、各施設は「住民の将来不安を解消したい」と意欲を見せている。
 小高区内にあった七つの介護施設は、原発事故でいずれも休止を強いられた。一帯は2016年7月に避難指示が解除されたが、現在稼働しているのは3施設にとどまる。
 このうち、山間部のデイサービス施設「彩りの丘」は昨年11月に新規参入した。市内の高齢者が軽作業や入浴を楽しんでいる。
 運営者は地元出身の大井千加子さん(56)。長く南相馬市内などの介護、医療現場で働いてきた。「疲弊した地域を支えたい」と、解体予定だった民家を借り受けてオープンさせた。
 隣接地では、寝たきりの高齢者らを受け入れる建物の工事も進めている。木製テラスを整え、室内からベッドごと移動できるよう工夫した。開所予定は今年2月。大井さんは「高齢者が安心できる環境を整え、地域再生に貢献したい」と決意をにじませる。
 小高区は約2300人が地元での生活を再開させている。3割弱の住民が戻ったものの、半数は65歳以上の高齢者だ。子や孫の世代との同居を解消した世帯も多く、域内での介護サービス拡充が急務となっている。
 高まるニーズを受け、入所型施設も再開へ動きだした。小高区にある特別養護老人ホーム「梅の香」は昨年22日、今年4月からの受け入れを決めた。難航していたスタッフ確保にようやくめどがついた。
 60床のうち20床を稼働させる。食事のメニューに制約が生じるものの、段階的にサービス拡充を図る。運営する南相馬福祉会(南相馬市)の大内敏文常務は「空きベッドがあればショートステイに対応できる。帰還住民の介護負担を少しでも軽減したい」と話している。