津軽海峡の荒波がようやく静まり、雪をかぶった小屋から小舟が次々とタコ漁に向かった。
 竜飛崎に近い青森県外ケ浜町三厩の梹榔(ひょうろう)地区は、まさに海と山のはざま。海岸から山際まで数十メートルしかない。貴重な平地の海際に、約15棟の古い木組みの建物が並ぶ。近くの山の木を切り出して柱を立て、上を板で覆っている。
 地元漁師が「はいだし」と呼ぶ小屋は、奥行き十数メートルの細長い保管庫。漁から戻って舟を入れたら、屋根へ網を運んで、ごみを取って干す。雨や雪の日は中で作業すればいい。
 100年前にはもうあったらしい。かつては家と接した小屋もあったとみられるが、今は職住分離。
 「雨がしのげるので便利さは変わらない。でも、うちの『はいだし』は私の代まで」と漁師の三浦栄悦さん(62)。妻と2人のタコ漁を終え、舟を引き揚げながら少し寂しげに話した。(文と写真 写真部・庄子徳通)

[メモ]梹榔地区は21世帯43人。「はいだし」の意味ははっきりしないが、ここだけの独特の呼び名。現在15隻が保管されているものの、高齢化などで実際に出漁しているのは半分の7、8隻。冬はタコやイカ、夏はワカメ、コンブなどの海藻を採る。