東京電力福島第1原発事故で福島県楢葉町からいわき市に避難した鮮魚店2店の共同経営による仮設商店「くんちぇ広場」が、3月10日で営業を終了する。近くの町民向け仮設住宅の提供が3月で終わるため。店主は「避難者の生活に寄り添う役目を果たせてよかった」と次を見据える。

 経営するのは、ともに市内に避難する三本木充男さん(68)千代さん(63)夫妻と、吉田晃さん(57)範子さん(52)夫妻。それぞれ楢葉町のJR木戸駅近くで三本木商店、竜田駅近くで吉田魚店を営んだ3代目だ。
 2011年10月にいわき市中央台高久のプレハブ店舗で開業。三本木さんは「楢葉で商売させてもらった恩返しを、との一心。採算は後回しだった」と振り返る。
 近くにできた仮設住宅約400戸に入る町民は、車を運転しない高齢者も多かった。プレハブ店舗の売り場は約50平方メートルながら生鮮食品や総菜、菓子類がそろい、多い日は150人以上が訪れた。
 重い商品はバイクで配達した。旬の魚を数種類用意し、刺し身は注文を受けて切る。妻たちが手作りする総菜や弁当も人気。仮設住民以外の台所も支えた。
 「くんちぇ」は「ください」の地元言葉。「広場」には「古里を離れた町民が気軽に立ち寄れる場所に」との思いを込めた。当初は店内で多くの人が再会を喜び、今も昼前には女性たちが集まり、わいわいと品定めを楽しむ。
 今春に楢葉町に戻るまで仮設に暮らす女性(80)は「もともと楢葉の店なので親しみやい。毎日の買い物で助けられた」と感謝する。
 町の避難指示が15年9月に解除されたほか、市内で住宅を確保する人も増えて仮設入居者は徐々に減少。売り上げも減ったが、やりくりでしのいできた。
 「町民のよりどころとしての役割は何とか果たせた」と三本木さん。将来は町に戻るが、店を再開するかどうかは未定という。
 吉田さんは竜田駅前の店跡地に海鮮系ランチ中心の飲食店を出す計画。仮設住宅の提供終了で、帰町が進んでも以前の商売が成り立つかどうかは見通せない。
 吉田さんは「新しい店もくんちぇ広場と同じよう会話を楽しめる場所にしたい。にぎやかな町に戻るのに役立ちたい」と話す。