国のコメ政策見直しを巡り、東北各県の農業再生協議会が初めて設定した「生産の目安」が出そろい、2018年産の大枠が固まってきた。大きな混乱はなく推移しているが、19年産以降の動向は依然として見通せない。国には政策転換に伴う生産者の不安を払拭(ふっしょく)する責務がある。東北の産地は、この転機をコメ作りや農業の全体像を考えるきっかけと捉えたい。
 各県の再生協が示した「目安」は表の通り。設定はいずれも手堅く、背景には過剰作付けとコメの値崩れに対する警戒感がある。米価は14年産を底に持ち直しつつあり、産地は価格安定を重視した格好だ。
 コメ作りの関係者に聞いたインタビュー企画(1月8日から5回)で、18年産の価格は「大きな変化はなさそうだ」との見方が示された。一方、米価の今後の動向や、コメの直接支払い交付金の廃止に伴う影響は読み切れず、19年産以降への産地の懸念は消えない。
 国は「需要に応じた生産」を掲げ、不足感が高まる業務用の生産増加を産地に強く働き掛けている。輸出用も19年産の年間輸出量を10万トンに増やす目標を定め、主食用からの転換を促す政策にシフトした。
 仙台市内で6日にあった18年産米を巡る意見交換会で、農林水産省の担当者は業務用、輸出用の作付け拡大を要請。主食用については「実際の作付けがどうなるかが重要。注視する」と述べるにとどめた。
 生産現場には「猫の目」とされる農政への不信感が根強い。国が示す青写真は、高齢化や担い手不足に悩み、厳しい経営環境に置かれた農家に明確な展望を示せていない。
 主食用の海外マーケットはアジアの一部に限られ、生産コスト面からも採算を取るのが難しいとされる。業務用は国から手厚い交付金が得られる飼料用の作付け拡大で、生産が圧迫されている。
 市場の原理から言えば、コメ卸関係者の「間違いなく売れる業務用米をなぜ作ってもらえないか不思議だ」との思いはもっともだろう。再生協の目安設定では、独自に一定の実需を反映させた県もあり、受け身の姿勢に変化の兆しが見て取れる。
 需要の動向を見極めながら、品種構成や作付け誘導といった戦略構築は欠かせない。他産地と差別化を図り、地域の独自色を打ち出す機会でもある。東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)はインタビューで「農協の役割がより大きくなる」と指摘した。
 16年の東北の農業産出額1兆3885億円のうち、コメは4129億円(29.7%)を占める。ただコメの割合が高い秋田、宮城両県が産出額の6位と5位にとどまる状況を踏まえれば、コメに頼らない農業の実現も急務だ。
 幅広い品目に視野を広げた柔軟な視点と、足腰の強い産地形成を目指す力が、今まで以上に求められているのは間違いない。コメの需要が毎年8万トンずつ減る中で、東北農業の地力が試されている。(報道部・加藤健太郎)

[コメ政策の見直し]40年以上続いてきた生産調整(減反)の廃止が柱。国は生産数量目標の配分をやめ、全国の需給見通しや作付け動向などの公表のみとし、産地主導の「需要に応じた生産」を進める。減反参加農家に10アール当たり7500円を支払ってきた直接支払い交付金は18年産からなくなる。全国農業協同組合中央会などは昨年12月、民間で需給を議論する全国組織を発足させた。