青森県外ケ浜町の蟹田港とむつ市の脇野沢港を結ぶカーフェリーを運航する県の第三セクター「むつ湾フェリー」の経営が正念場を迎えている。慢性的な赤字体質の同社に公金で支援することを、むつ市が拒否。料金の引き上げなどで収支改善を目指すが、有効な打開策を見いだせていないのが現状だ。(報道部・横川琴実)

<経営評価「最低」>
 「本年度は料金引き上げのほかに、大型連休中の増便や、外国人観光客の取り込みなどで利用者増を目指す。黒字化につなげたい」
 むつ湾フェリーの担当者の言葉通り、蟹田港近くの会社事務所では21日の今季の運航開始に向けての準備が急ピッチで進んでいた。料金改定に伴うボードの張り替えに加え、パンフレットも新調した。社員らは得意先へのあいさつを兼ねた営業の電話に忙しい。
 同社は今シーズンから大人の乗客の運賃を1470円から1770円に引き上げるなど、収支改善へ向けた計画を策定中だ。県交通政策課の担当者は「本年度は5年に1度の船舶検査の支払いもあるが、見通しは立っている」と強気な姿勢を見せる。
 公社などの経営状況を評価する県公社等評価委員会は昨年12月、むつ湾フェリーを4年連続で最低のD評価にした。債務超過が懸念され、財務体質の改善は「待ったなし」の状態だ。
 同社の赤字体質は2006年度に始まり、11~15年度は5期連続の赤字だった。利用者の9割を占める観光客の減少が響いている。
 東日本大震災があった11年度の利用客は前年度の半分の2万2590人に激減した。12年度以降は2万9000~3万8000人台で推移するが、震災前の水準には遠く及ばない。定員240人の船で、16年度の1便当たりの平均利用者数はわずか38人だった。

<むつ市 支援拒否>
 出資自治体であるむつ市の16年度からの決定が、追い打ちをかける。累積赤字約7570万円の解消策に税金を投入することを同市が拒否。補填(ほてん)額は、県と外ケ浜町が負担した約4700万円にとどまった。
 県は公金投入の理由の一つに、下北半島で原子力災害が起きた際の避難航路確保を挙げる。しかし、避難者を抱えることになる当事者のむつ市には、この説明が詭弁(きべん)としか映らない。
 宮下宗一郎市長は言い切る。「フェリーの輸送人員は約200人。あるに越したことはないが、むつ市に基地のある海上自衛隊の護衛艦なら数千人規模で運べる上、現実的」。さらに「公的資金を注入しても存続させる価値があるという、将来を見越した具体策が示されない」と手厳しい。
 同社や県などは、弘前市を出発しむつ市の薬研渓流などを巡るモニターツアーや、陸奥湾に生息するイルカを観光資源にしたキャンペーン企画を実施するなど利用増を目指すが、効果は芳しくない。17年度の利用者は前年度の9割だった。
 県公社等評価委員会委員長の井上隆青森大教授(経済政策論)は「利用者の9割は観光客。津軽半島と下北半島の観光振興を県全体で考えなければならない」と指摘する。

[むつ湾フェリー]青森県27.24%、弘南バス(弘前市)33.69%、外ケ浜町10.52%、むつ市8.15%を出資する第三セクター。資本金1億円。1967年下北観光汽船として設立。79年に蟹田-脇野沢航路を開設した。2006年に離島航路を別の第三セクター「シィライン」(青森市)に分割し、現在の形になった。