後継者不足で廃業を考える個人事業主の会社や店を移住者らが引き継ぐ「継業」の取り組みが、秋田県由利本荘市で広がりつつある。移住者側は店舗などの資産や経営のノウハウ、顧客を引き継げる。地域にとっては空き店舗の解消につながるため、一石二鳥の人口減少対策として注目を集める。
 「一時は店を畳もうと考えたが、お客さんのためにも誰かが継いでくれたらうれしい」
 同市中心部にある「カフェ・カトルセゾン」。店主の堀内憲二さん(68)が12年前に開いた店はオムライスとタルトが評判で、市内外から客が訪れる。堀内さんは約2年前から体力の衰えを感じ、市の協力を得て「継業者」の募集を始めた。
 500万円で店の営業権を譲るほか、木造2階の店舗兼物置やオーブン、テーブル、食器類なども渡す。希望に応じて、料理や菓子作りの技術も伝授するつもりだ。堀内さんは「経験は問わない。やる気のある人に引き継ぎたい」と語る。
 市仕事づくり課は2016年、「移住+継業」事業をスタートさせた。店舗の外観や譲渡の条件などを示して公募し、店近くの住宅も紹介する。市商工会と連携して経営指導なども行う。
 昨年7月には、廃業予定のパン屋を秋田市の夫婦が受け継ぎ、再オープンさせた。市によると、自治体が支援して継業に結び付けた事例は全国でも初めてだ。
 ただ、従来の経営をできるだけ引き継いでほしいと願う事業者に対し、新たな分野にも挑戦しようと考える移住者もいる。堀内さんの店は募集開始後、4件の問い合わせがあった。中には「自分らしい店を作りたい」という理由で断念した人もいたという。
 市仕事づくり課の担当者は「試行錯誤の最中で課題はあるが、取り組みを広げることで地域活性化につなげたい」と語る。後継ぎのいないペンション経営者や農家、養豚業者などからの相談もあるという。
 秋田県内は、高齢化や若者の県外流出などで後継者不足が深刻化している。帝国データバンク(東京)の17年の調査では、後継者不在の企業の割合は68.6%で、全国平均の66.5%を上回る。
 県事業引継ぎ支援センター(秋田市)の河田匡人統括責任者は「継業はゼロからの起業と異なり、リスクが低いのが利点。移住希望者の中には店を持ちたいという人も多く、新たな選択肢になる」と期待する。