東日本大震災の津波で被災した文化財の修復を担う岩手県立博物館(盛岡市)が、時間との闘いを強いられている。修復作業を資金面で支える文化庁の補助が、国の復興期間に合わせて2020年度末で廃止になるためだ。膨大な修復はようやく半分を終えたにすぎず、県立博物館は「完了にはさらに10年が必要」と訴える。(盛岡総局・斎藤雄一)

 県立博物館が修復する文化財は、岩手県沿岸6市町の約50万点に上る。うち約46万点は陸前高田市で回収した古文書、民俗衣装、植物標本など。いずれも地域の歴史や文化を後世に伝える貴重な資料だ。
 海水に漬かった文化財の再生は前例のない試みだったが、全国各地の博物館や大学と連携して技法を確立した。物品別に除泥や脱塩の手順をマニュアル化し、これまでに約25万点の修復を終えている。
 こうした一大プロジェクトを支えてきたのが、12年度に創設された文化庁の「被災ミュージアム再興事業」だった。
 県は事業補助を活用して博物館に修復用の専門施設を新設。本年度も約3億4800万円の補助を受けた。修復用機材のレンタル料や専門施設に勤務する作業員17人の人件費も再興事業補助で賄っている。
 ただ県立博物館によると、未修復の残り半数は特に損傷が激しく、従来の手法では対応困難という。脱塩のため長時間真水に漬けるとふやける洋紙や一部が分解してしまう郷土玩具の修復には、新技術の考案が不可欠となる。完了まで10年を要する見込みだ。
 県生涯学習文化財課の鎌田勉文化財課長は「修復を待つ資料は地域の文化そのもの。次世代に伝えなければならない。文化庁には別の形で補助を継続してもらえるよう要望している」と話す。