東京電力福島第1原発事故に伴い帰還困難区域を抱える福島県内6町村の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備計画が11日、全てそろった。7年以上も避難を続ける住民は「古里へ戻れる」と除染やインフラ整備に期待する。一方「戻らない」と決めた世帯も多く、「知り合いのいない寂しい街にならないか」と不安を拭えないのが実態だ。
 「小さな家を建てて戻りたい」。双葉町の元建具職人鈴木重幸さん(77)は避難指示解除後を思い描く。
 避難前は海や川で釣りざんまい。山には山菜やキノコが豊富にあった。「避難が長引くほど双葉が恋しくなる」。復興拠点は帰町への希望につながっている。
 双葉町は96%が帰還困難区域に入り、住民の全町避難が続く。町はJR双葉駅西側に新市街地を先行して整備し、自宅が復興拠点から外れた人を含む帰還住民の受け皿となる住宅や宅地を建築・造成する。
 鈴木さん夫婦は今春、福島市の借り上げ住宅からいわき市の災害公営住宅に移った。知り合いは避難先で住宅を確保した例が多い。
 「双葉に市街地ができても周りに知り合いがいないかもしれない。年も取っており、暮らしには不安がある」。帰還への期待と帰還後の不安が交錯する。
 町の復興拠点はJR双葉駅周辺の555ヘクタールと町域の約1割にとどまる。町は将来の全域解除を目指すが、時期は全く見通せない。
 駅西側に自宅がある元行政区長の原中良博さん(75)は「古里は捨てがたいもの。きれいに家が立ち並べば戻る人も出てくるだろう」と語る。
 11日に復興拠点の計画が認定された葛尾村野行(のゆき)地区は典型的な中山間地だ。住民は原発事故前は山菜採りなど自然の恵みと共に暮らしてきた。
 県内で避難を続ける60代男性は帰還を望みながらも、周辺の山林の除染が行われないことを懸念。「復興拠点周辺の線量も下がらないのではないか」と語る。
 村が昨年7~9月に実施した野行地区の住民意向調査では、約半数が何らかの形での帰還を希望した。それでも男性は「本当に希望通りに住民が戻るのかどうか」と表情を曇らせた。