青森県下北半島の奥地の入り江に面した50世帯ほどの小さな集落に、全国から客を集める飲食店がある。佐井村長後福浦地区で「ぬいどう食堂」を経営する柳田良子さん(69)は「観光客を増やすため」と、採れたての魚介類を使った「太っ腹」な丼を提供する。(むつ支局・勅使河原奨治)

◎ぬいどう食堂店主 柳田良子さん(69)

 -ご飯に対してウニの量が多過ぎませんか。
 「遠くから来てくれたお客さんをがっかりさせたくありません。ウニ丼1500円。歌舞伎丼1000円はずっと値上げせずにやっています。完全にもうけ度外視です。高齢化が進む地域の活性化になればと思っています」
 「午前3時に起きて夫と2人で材料の仕入れに行きます。それからウニの殻むきをして、仕込みをします。毎日大忙しです」

 -お店を始めたきっかけは何ですか。
 「嫁いできたばかりのころ、義父に『これからは漁師だけでは食っていけなくなる』と言われて始めました。最初は地元の人向けに70円でラーメンを出していました。7月で44年になります」

 -ウニ丼と並ぶ名物の歌舞伎丼の由来は何ですか。
 「地区には県無形民俗文化財の『福浦の歌舞伎』があり、これにあやかって名付けました。ウニやイカのほか、漁獲状況に合わせてアワビやマグロ、イクラなどが入ることもあります」
 「歌舞伎公演の日は地域全体が盛り上がります。人手不足で村外から役者を何人か募るようになりましたが、ほとんど近所の人たちで演じています。昔は私も芝居に出たことがあります」

 -お客さんはどんな所から来るのですか。
 「最初は自衛官の口コミなどでお客さんが広がっていったのですが、10年ほど前からネットで見たという人が増えました。一番遠くから来た人は沖縄でした」

 -アクセスが悪く、下北半島で最も時間がかかる場所です。
 「ここに来るためには下北の観光地のどこかを必ず通ります。近くにも国指定天然記念物の仏ケ浦があります。下北の観光地を巡るきっかけになっているといいですね」

 -今後の目標は何ですか。
 「『来たかいがあった』と言われるのがうれしい。何もしなくなるとぼけてしまうので、80歳くらいまでは続けたいと思います」