出勤して社会面デスクの席に着くと、そばの一覧表を見る。もうすぐ丸7年になる東日本大震災の関連記事の出稿予定だ。掲載面ごとに記され、期間は1カ月を超える。沿岸総支局の記者らとの議論を踏まえ、震災取材班がまとめた。
 社会面は人物の思いを描く「人もの」が中心となる。現在は移住者や支援者を紹介する「あなたと共に」を展開中。人生の選択の理由や苦悩、決意が語られる。耐え難い悲しみに覆われたあの日のことを自らの言葉で話し始めた子どもたちも近く登場する。
 一覧表を眺めるうち「被災者自身の語り直し」という言葉を思い出した。2015年の長期連載「挽歌(ばんか)の宛先」のインタビューで、哲学者の鷲田清一さんが重要性を唱えていた。
 「人に語るということは、少しずつ悲しみを引きはがし、一つの出来事に整える。自分という存在を組み立ててきた物語を再構築することで大切な人の死を受け入れ、心を収めていくきっかけになる」
 復興に向かう被災者の歩幅は一人一人異なる。語り直す姿を伝える紙面を通じ、再生の糸口が見つかることを願ってやまない。
(報道部次長 沼田雅佳)