仏師は木を削って仏を作るのではなく、木の中に埋まっている仏を見つけて彫り出すのだとか。
 山形県立博物館(山形市)の入り口に、同館所蔵の国宝「縄文の女神」をモチーフにした木像が飾られたのを見て、夏目漱石が「夢十夜」で語った運慶の逸話を思い出した。
 こちらは仁王像ならぬ縄文土偶だが、実物が発する独特な生命感まで再現されていて感心する。チェーンソー・アートだというから、さらに驚きだ。
 作者は上山市の造園会社社長井上睦夫さん(62)。倒木の恐れがあるとして、伐採を依頼されたモミの木を使った。樹齢約120年で、幹回りは約3メートル40センチ。見た目は堂々たる古木だったが、立ち枯れて久しく、内部には割れもあった。
 「でも、チェーンソーを入れて驚きましたよ」と井上さん。胸の膨らみから腹部のくぼみ、腰の張りと彫り進むと、理想的な形の年輪が浮き出てきたという。
 樹木には木霊が宿るとも聞く。さては老木の精霊が新たな姿を得ようと、井上さんを呼び寄せたか?
 大型連休中も来館者を出迎える女神像。一見の価値ありですよ。
(山形総局長 昆野勝栄)