先月の大崎市長選、市議選を取材した。記者生活は30年近いが、何度やっても開票日の取材は緊張する。
 特に神経を使うのが、写真の送稿。原稿は用意できるが、写真はそうはいかない。降版時間が迫る中、何度も冷や汗をかいた。20年ほど前の、福島県内でのある市長選が忘れられない。
 新しい支局に赴任し、隣の支局の選挙を手伝った。「現職が勝つから、君は新人の所に」。先輩記者から、普段使わないインスタントカメラを渡された。
 当時はフィルムカメラの時代。ただ、選挙の時は現像時間がなく、インスタントカメラで撮影し、写真を電送した。スマホはもちろん、デジカメもなかった。
 敗者の写真は使わず、敗戦の弁だけ送る手はずだったが、事務所で待つと「勝ちそう」と空気が一変。「話が違う!」。そう心で叫び、締め切りが迫る中で到着を待った。現れた新市長を慌てて撮ったが、専用フィルムがすぐ無くなった。
 「ああっ」。事務所に出向く前に、練習で息子の写真を撮り過ぎていた。紙面には、リングで手を上げる孤独なジャイアント馬場さんのような勝者が載った。それしか使えなかった。
(大崎総局長 大場隆由)