ふと、『遠野物語』に登場するカッパを思い浮かべた。頭の皿が干上がっている。こちらの頭の中も水気がなくなって、知らず知らず感性がすり減ってきている気がする。
 この春、写真部に待望の若手がやって来た。秋田勤務を終え本社に異動した女性のHさん。写真には文章に勝るとも劣らない力があると考え、「いつかは…」と希望していたという。
 社内でも屈指の男所帯で体育会系の当部。「うまくやっていけるかな?」と心配したが、世話好きな先輩たちに囲まれて毎日元気に仕事に打ち込んでいる。
 まだ20代。「仕事だけの人生は送りたくない」というプライベート重視の世代だろうが、昭和のおじさんとの「飲みニケーション」にも付き合ってくれる。酒どころで仕込まれたのか、自ら鍛え上げたのか、お酒もいけるクチ。
 「行ってきます!」。取材に向かう声ははつらつとしているが、大きなカメラバッグを背負う後ろ姿はいかにも頼りなげ。つい20代のころの自分と重なる。右往左往するばかりの恥多き時代だが、干上がった皿に少し潤いを恵んでもらったような気がした。
(写真部次長 佐々木浩明)