偶然だと思っていた。出勤すると会社のエレベーターが、ご丁寧に扉を開けて待っている。社内のある人から、1階で一定時間「客待ち」をする設定になっていると聞いた。出過ぎた振る舞いをするものだ。
 私事であるが、エレベーターにいい思い出はない。
 子どもの頃、通院していた大学病院に、扉を開けたまま止まっていたエレベーターが1基あった。中は薄暗く不気味だ。足を踏み入れたら最後、扉が閉まって闇の中に突き落とされてしまうのではないか、そんな恐怖におびえた。その残像が焼き付き、高校に上がるくらいまで一人きりでエレベーターに乗れなかった。
 大学時代、ひどくうなされて夜更けに目を覚ましたことがあった。起き上がって前を向いたら両親が立っていて仰天した。聞けば「開けろ」と叫びながら窓をたたいていたそうだ。そのころ、アルバイトをしていたスーパーに、やはり薄気味悪いエレベーターがあった。それに閉じ込められた悪夢を見たに相違ない。
 エレベーターが嫌なら階段を上ればいいが、息を切らして職場にたどり着くより乗った方が楽なので、余計にしゃくにさわる。
(整理部次長 山内一也)